関西病虫害研究会報
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ジャガイモ疫病菌による粉状そうか病類似の病状発現
桂 〓一千速 明
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1968 年 10 巻 p. 10-15

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抄録
収穫時のジャガイモ塊茎に,粉状そうか病に類似した病状を呈するものが発生している. 病患部に粉状そうか病菌(Spongospora)が見られないし,しばしばジャガイモ疫病菌が見られることから追求した結果, 次のような結論に達することができた.
すなわち降雨中に雨滴とともに地面に落下したジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans f. sp. infestans Waterhouse)の遊走子は, 土壌中を滲透し塊茎に侵入するが,そののち晴天になり地温が上昇したために,疫病菌が死滅した結果, 菌の侵入部付近に癒傷組織の形成がおこり, 組織の増生による隆起のため表皮が破れて, 粉状そうか病類似の病状を呈するに至ったものである.
ジャガイモ疫病菌は, 32℃で36時間あるいは34℃で短時間で死滅するし, 感染塊茎は28℃以上におくと全然腐敗がおこらない. また本菌遊走子は, 土壌中の水が流下している場合でも, また湛水状態にある場合でも, よく土壌中を下降滲透することができる. また塊茎のクチクラは20℃の場合8時間で貫入することができる.
20℃で遊走子を接種し8, 12, 24時間保った魂茎を, 34°, 36°, 40℃に置きかえた場合や, 塊茎を埋めた土壌に本菌遊走子けんだく液を注入し, 20℃に2日および4日保ったのちに34℃の高温に置きかえた場合, いずれも14日後には畑で発生したものと同様の粉状そうか病類似の病状を発現した. 次に遊走子で接種したのち, 高温に置きかえた塊茎の接種患部の細胞組織におこる木栓質化と木質化は, 1定日数後に呈色反応で調べた結果, ほゞ7日後からはじまり, 14日後には顕著になる. なお細胞増生による癒傷組織形成も, ほゞ7日後から顕著になる.
以上の実験結果から, ジャガイモ疫病菌によっておこる粉状そうか病類似の病状が発現する機作を明らかにすることができた.
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