関西病虫害研究会報
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ミナミアオカメムシの増殖における早期水稲栽培の役割
桐谷 圭治法橋 信彦榎本 新一
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1961 年 3 巻 p. 50-55

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抄録
早期栽培によつてミナミアオカメムシの動きが, どう変るかを知るために, 直線的に1km, その間に550mにわたつて標高70mの山でさえぎられた山畑と早期水田を調査地点にえらんだ.
両地点について, 卵寄生率, 各発育段階の個体群密度の動きをしらべ, 成虫の行動は標識法と誘ガ灯の設置によつてとらえた.
結果は, (1)成虫は早期水稲の出穂数日で周辺部から集中飛来すること (2)1kmの範囲内の成虫はその飛来圏に入ること (3)成虫密度のピークは山畑と早期水稲では2週間もずれ,山畑の成虫密度の減少は早期水稲への飛来にも一部もとずくらしいこと (4)卵寄生蜂はカメムシ成虫の行動について行けないため早期への成虫飛来の初期には, 卵の寄生率は山畑にくらべ非常に低い. そのため早期でのカメムシの増殖率は山畑にくらべ高い.
とくに, ミナミアオカメムシの水稲以外の寄生植物が, この虫の増殖に不適となる時に, 早期水稲の出穂ならびに乳熟期になり, それが1化期成虫の羽化時期にあたることが, 上記の理由とともにミナミアオカメムシが早期水稲の重要な害虫になつた原因と考えられる.
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