抄録
1. 本報においてはイラガとその寄生バチ, イラガイツツバセイボウの越冬期間中における含有脂肪量および水分量の変化とイラガの営けん場所にかんする二, 三の事項, およびイラガに対するイラガイツツバセイボウとイラムシヤドリバエの寄生率をとりあつかつた.
2. イラガ越冬幼虫の含有脂肪量は11月下旬から12月上旬にかけてゆるやかに増加し, 2月頃最高に達するが, 3月上旬より減少し, よう化約15日前にいたつて急減する. また含有水分量の消長は脂肪量の増減とほぼ反対の経過をたどる.
3. イラガイッッバセイボウ越冬幼虫の含有脂肪量は11月下旬~12月下旬に急増するが, その後はゆるやかに増加して2月中旬最高に達し, 3月下旬より減少し, よう化約15日前に急減する. また含有水分量の変化はイラガの場合とほぼ同様である.
4. 岐阜地方におけるイラガの発が期は6月上~中旬である.
5. イラガに対する寄生虫の寄生率には季節的に一定の傾向はみとめがたいが, イラガの加害樹種によつて寄生率にかなり差を生じ, ナシ樹での寄生率はサクラおよびハンノキ樹におけるよりも低い. またナシ樹におけるイラガイッッバセイボウの寄生率は樹の南側において高く, 垂直的には2~3mのところで多く寄生する.