抄録
1997年8~11月に三重県内の育苗施設でキャベッのセル成型苗に発生した病害の病原菌を同定した結果, 被害を最も多く発生させていたのは黒すす病菌{Alternsria brassicicola (Schweinitz) Wiltshire}であった。 本病の病徴は, 最初に子葉に黒~灰色の病斑ができ, 蔓延すると子葉の付け根や胚軸にも黒~褐色の病斑を形成して苗立枯れに至る。10月以降の低温期にはPythium megalacanthum de Bary による苗立枯れが多く発生した。本病では, 胚軸に水浸状の病斑ができ, 株全体が萎れる。 乾燥すると罹病部位は白色に乾腐する。胚軸に褐色の水浸状病斑を形成する苗立枯病菌 (Rhizoctonia solani Kühn) と, 白褐~褐色に胚軸を乾腐させる根朽病菌{Phomá lingam (Tod:Fries) Demazières}による立枯れも僅かに発生していた。 これらの他に, キャベッの病原菌としては未記載の2種のFusarium 属菌が褐色の病斑を伴って立枯れていた株から分離され, 病原性が確認された。 また, 夏期には野菜・茶業試験場においてピシウム腐敗病菌{Pythium aphanidermatum (Edson) Fitzpatrick}による被害も発生した。 本病の病徴はP.megalacanthum によるものと同様であった。