一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
(一社)日本家政学会第55回大会
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すくい縫いミシンを用いた芯地縫製におけるすくい量と芯地効果の関係
*松梨 久仁子島崎 恒藏
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p. 187

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抄録

目的 既製服における背広のラペル部の芯地付けにすくい縫いミシンを使用する理由の1つに、接着芯では得られない立体形状を作ることが挙げられる。本研究では、前報1)で検討した表布に芯地を縫い付けた場合のすくい量についてさらに検討を加えた上で、すくい量やステッチ線間隔が芯地効果すなわち芯地付けされた布地の保形性や形状の変化に与える影響について検討する。実験 用いたミシンは八刺し専用のすくい縫いミシン(トレジャー・BS-808)で、試料は毛、綿など様々な素材の布地の他に4種類の毛芯を加え、計13種類とした。縫製条件は、布上げ高さはダイヤル設定値1から9までの間で変化させ、ステッチ線間隔は5mmと10mmとした。縫製方向はたて、よこに加え、地糸に対し様々な角度を持った右上がりと右下がり方向とした。縫製されたサンプルについて、上側の布のすくい量l、下側の布のすくい量lを測定した。芯地付けによる布地の形状の変化については曲げ特性で評価することとし、KES-FB計測システムの純曲げ試験、45°カンチレバー法及びスライド法による剛軟性試験を行った。結果 布を積層させたり縫製方向を変化させたりすると、その条件に伴ってすくい量は変化する。地糸に沿った場合のl、lは、布上げ高さ、上布、下布の厚さ、たてよこ方向の織り糸のクリンプ率、曲げ剛性などから、推定可能であることが定量的に明らかになった。すくい量に対する布の方向性については、地糸方向のすくい量を1として、縫製方向の角度を変化させた時のすくい量の増加割合を把握することにより、布の方向性の影響を表すマスターカーブを得ることができた。縫製により芯地付けされた試料は、すくい量が大きくなるとそりが大きくなることが確かめられた。布のそりについてすくい量と曲げ剛性の関係から検討した結果、すくい量が大きくなるに従って芯地付けされた試料は芯地側へは曲げ剛くなり、逆に表地側へは曲げ柔らかくなる傾向が認められた。(参考文献)1)松梨久仁子、島崎恒蔵:繊維連合研究発表会要旨集、p.133(2002)

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© 2003 一般社団法人 日本家政学会
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