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目的 女性起業にはコミュニティを活性化するものが多い。これらまちづくりに貢献する起業を育てるために女性起業セミナー参加者の実態を把握し、そのエンパワーメントのための課題を明らかにすることが研究目的である。方法 自治体の協力を得て、京都市と兵庫県主催の女性起業セミナー参加経験者にアンケート調査と、アンケート協カ者より協力者をつのり、後日グループヒアリングを実施した。結果 起業セミナー参加者層は、2自治体とも、主婦やフルタイム、パートなどであり、その構成も似通っている。また、受講後は主婦とフルタイムが減少し、起業とパートが増加している。年代では20代60代は少なく30~50代からは同比率の参加がある。配偶者や未婚の子どもがいる人は過半数あり、それが参加の阻害要因とはいえない。また、起業を視野に入れての参加が半数、まだの段階の層が半数である。このことが受講評価に差を生じさせている。共通している受講者像に対し、2自治体では動機に多少の違いがあった。京都の場合は「起業の知識がほしくて」が1位であるが、兵庫県は「ネットワークがつくれる」であった。実証するのは次の課題であるが、兵庫県女性起業セミナーが開催されたのは1995年であり、阪神淡路大震災を体験していることになる。何よりもネットワークの大切さを感じた体験に裏打ちされた実感の影響ととれる。セミナーの工夫としては受講者の二層化に対応することが課題であることがわかった。評価については、期待した内容は得られていないのに全体的満足度は高く、起業というキーワードや、ベクトルを待った女性との交流を通じ、自らのパワーアップを感じたためと考えられる。(本研究はトヨタ財団の研究助成を受けたものの一部。発表者以外に研究参加者多数)