一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
セッションID: 2Ba-9
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換気型消防服の開発
*物部 博文村山 雅己生野 晴美中橋 美智子
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抄録

目的】消防服をはじめとする密閉型の衣服では、衣服内気候の換気が少ない。そのために潜熱放熱が抑制され、活動に伴う代謝熱を人体に蓄熱させる傾向にある。事実、気温の高い真夏に出動した消防隊員が熱中症で倒れる事故も発生しており、早急に解決する必要のある課題である。だが、ヒートストレスへの対応策は様々な角度から検討されているものの、未だ有効な方法は開発されていない。我々は、消防服に代表される密閉型防護服のヒートストレス問題を解決することを目的とし、電池駆動によるファンにより衣服内気候の換気を促進する方式を開発し2002年に特許申請を行った。本実験では、実用を目指した具体的な換気量等のシミュレーション、着用実験と他対処法との比較実験を行い報告する。【方法】健康な成人男性4名を対象に30℃環境下で_丸1_一般衣服、_丸2_消防服の通常着用、_丸3_冷却剤を用いた体幹部冷却、_丸4_自然換気補助方式(電動ファンで衣服内飽和水蒸気を衣服外空気と置換し、生体の発汗を補助する方法)、_丸5_頭部の温度抑制(保冷剤を用いた冷却と空冷)について被験者実験を行い、熱平衡方程式を用いて検討した。【結果と考察】冷却剤を用いることにより部分的に冷却効果が認められたが、他部位の皮膚温上昇が認められ、さらに被験者に不快感を伴うなどの問題点も認められた。これは冷却面の血管収縮が生じ、熱放散が妨げられることが原因であると考えられた。ここから推測すると冷媒を用いて冷却空気を送風する方法なども、冷却空気が拡散されなければ同様の弊害を生じる可能性があると考えられる。一方、換気システムでは、熱平衡方程式を用いて予測した程度とほぼ同様の効果が認められ、また、冷却のような問題点も認められなかったので簡易換気システムとして実用開発の可能性があると考えられた。ただし、ヘルメットを着用する頭部に熱が集中するのでヘルメット対策は課題となった。

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© 2005 一般社団法人 日本家政学会
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