抄録
【目的】油脂は加熱により変質を生じ易い。そのため油脂の劣化防止は大変重要である。近年、炭の活用の一つに油脂劣化防止効果が報告されている。しかし、炭の劣化防止効果は用いる炭の種類や炭化温度によりその効果が異なることも示されてきている。そこで本研究では、昨年に続き桃の種を炭にしてその効果を竹炭と比較して調べた。桃種を用いたのは、福島県は桃の産地であり消費量も多く、加工の際に大量の種が廃棄されていることから、この種の炭に油脂劣化防止効果が見られれば、資源の有効利用という観点からも重要と考えたからである。
【方法】試料油としてキャノーラ油を使用した。実験では温度コントロールの精度の高いホットプレートを用い500mlビーカーに油脂を100gとり、桃種の炭5g(5%相当)を入れ、220℃、250℃で2時間の加熱を行い、油脂の劣化度やトコフェロール(Toc)残存率を調べた。また、同様に60℃の定温器で加熱油脂、未加熱油脂を用い、数週間自動酸化を行い、その劣化防止効果も調べた。同じ条件で竹炭についても実験を行い、その効果を比較した。
【結果】(1)桃炭を5%添加し加熱した場合、油脂劣化防止効果が認められたが、竹炭には及ばなかった。(2)自動酸化(60℃)におていは、1週間の放置では桃炭による劣化防止効果は少なく、2週間目より効果が認められた。竹炭では1週間目より効果があり2週間ではその効果が顕著であった。(3)劣化防止効果は竹炭では800℃炭化、桃炭では1000℃炭化のものがすぐれていた。(4)加熱油脂の一部を取り、60℃の定温器に放置した場合でも、桃炭による油脂劣化防止効果が認められたが、竹炭には及ばなかった。