【目的】学習指導要領における高校家庭科の教科目標には「人間の健全な発達と生活の営みを総合的にとらえ」ることが掲げられている。しかし、家庭科教育においてこの目標がどのように実践されているかは甚だ疑問である。そこで総合化のあり方として、衣食住それぞれに関する内容の知見の一つ一つを直接に結びつけていくことが重要であるとの認識に基づき、本報では高等学校「家庭総合」を構成する「生活の科学と文化」を取り上げ、衣食住に関する教科書の記述内容の分析を通して、生活の営みを総合的にとらえる方法を考察した。【方法】高等学校「家庭総合」の教科書(7社8冊)を対象として、学習指導要領解説をもとに食に関する記述内容を分類整理した。次にこの分類を柱として、食と衣と住に関する内容のうち、直接的に結びつけることのできる箇所(キーワード)を抽出した。【結果】衣食住に関する内容の総合化をはかる際に重要なことは次の2点である。(1)衣食住の各内容においては固有の学習内容があり、その中での体系的な学習を前提として、家庭科における総合的な学習を考える必要がある。(2)食に関する内容と衣または住に関する内容を直接的に結びつける箇所(キーワード)としては、「資源・環境」「選び方・安全」「文化」が抽出された。しかし演者らが2004年に北海道内全高等学校を対象として実施した食に関する家庭科教育の実態調査では、「文化」はさほど重視されておらず、「資源・環境」「選び方・安全」は指導を割愛しているという結果が得られている。よって「資源・環境」「選び方・安全」「文化」のキーワードを利用して、衣食住を結びつけた家庭科教育の実践がどのように可能かを考える必要がある。