一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
59回大会(2007年)
セッションID: A1-3
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日常着としての和服の気候適応性
―江戸期の着方に着目して―
*有泉 知英子田村 照子
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抄録

目的 現代の和服は晴れ着化し,日常生活からほとんど姿を消している.しかし,和服が日常着であった時代,人々は明確な四季の変化に対応して衣替えにより寒暖の調節をはかると共にゆるやかな着方による活動性をも確保していたと考えられる.そこで本研究では,和服が日常着であった江戸期に着目し,春秋・夏季における和服の素材・着方の相違がその気候適応性に及ぼす影響を検討し,現代における日常着としての和服のあり方を探る基礎とすることを目的とした.
方法 和服の熱抵抗Rd・蒸発熱抵抗Reを湿潤サーマルマネキンを用いて測定した.着衣は春秋季の袷長着,夏季の絽の単長着の2種で,下着・帯等は各季節に応じた組み合わせとした.着装条件は,江戸前期の細帯ルーズフィット1(以下LF1),江戸後期の広幅帯ルーズフィット2(以下LF2),現代のタイトフィット(以下TF)の計3形式である.夏季の単においては約1m/secの有風条件を加えた.得られたRd・ReよりMecheelとUmbachの推定式を用いて各着衣の快適気候適応域を求めた.
結果 (1)Rd・Re共に、単(有風下)<単<袷の順で高く,衣替えによる素材・組み合わせ効果が示された. (2)着方についてRdはTF<LF1<LF2の順に,ReはLF1<TF<LF2の順に大きく,帯幅とゆとり量に依存した結果となった. (3)和服の気候適応域は安静座位時の条件で日本の気候と一致し,和服が座位中心とする生活様式に適し,夏季における風の利用が有効であることが示された. 以上,江戸期の和服は日本の気候と生活様式に対し,着方と組み合わせにより適応していたことを明らかにした.

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© 2007 一般社団法人 日本家政学会
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