一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
59回大会(2007年)
選択された号の論文の358件中1~50を表示しています
  • 小柴 朋子, 斉藤 秀子, 薩本 弥生, 嶋根 歌子, 土肥 祥司, 井上 真理, 大泉 幸乃, 田村 照子
    セッションID: P-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 伸縮性衣料の衣服圧測定は、センサーの外挿の影響や、人体組織の硬軟性の部位差、着装状態の不均一により再現性が低いなどの問題点を抱えている。一方、Kirkらにより提案された編布の2軸伸長荷重と人体の局所曲率から衣服圧を推定する理論計算法は再現性や精度に優れるとされるが、着用ひずみや人体曲率の測定は煩雑で問題も多い。人体曲率を再現性高く、容易に計測できる方法として3次元人体計測装置を用いて計測した人体下半身ダミーの局所曲率から推定した衣服圧が、圧センサー内蔵型ダミーにストレッチ製品を着装させ実測した衣服圧と一致するか検討した。
    方法 強伸度特性の異なるストッキング2種、ハイソックス1種、ガードル3種、スパッツ3種を対象として、衣服圧センサー内蔵型の日本人成人女子の平均的下半身ダミー(エイエムアイ(株))に着装させた時の10部位の衣服圧を5回繰り返し測定した。各製品を着装させた時の、同一10部位のウェール、コース伸長率を求め、二軸引張試験機(カトーテック_(株)_)を用いてそれぞれの伸長率に対応する伸長荷重を求めた。伸長様式は、それぞれ一方向の伸長ひずみがゼロでの一軸拘束二軸引張、二方向へのひずみの割合が1対2または2対1の二軸引張、ひずみが1対1の均等二軸引張の5種類である。ダミーの曲率半径は、3次元人体計測装置Cubicを用いて撮影した画像から、解析ソフトを用いて算出し、衣服圧をKirkらの式に代入して推定した。
    結果 実測圧に比べ推定圧は小さい傾向を示し、両者間の相関は低かった。実測圧は、繰り返しによる再現性が部位により差があることが明らかとなった。衣服圧の推定上の問題点としては、3次元撮影画像からの曲率を算出方法の検討や、2軸伸長の適切な再現等が指摘された。
  • 嶋根 歌子, 土肥 祥司, 井上 真理, 大泉 幸乃, 小柴 朋子, 斉藤 秀子, 薩本 弥生, 田村 照子
    セッションID: P-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    ストッキング着用時の衣服圧と体型との関係 ○嶋根歌子* 土肥祥司** 井上真理*3 大泉幸乃*4 小柴朋子*5 斉藤秀子*6 薩本弥生*7 田村照子*5 (*和洋女大, **(社)人間生活工学研究センター, *3神戸大, *4東京都立産業技術研究センター, *5文化女大, *6山梨県立大, *7横浜国大)             目的 多種多様なパンティストッキングが開発され、販売されている。しかし、実際に着用した場合、個人の体型の違いにより生じる衣服圧は身体各部でどの程度異なるのか、圧迫感とどのような関係があるのかを検討する必要がある。本研究は、通常Mサイズを着用している30名の被験者が締めつけ力の異なるMサイズのストッキングを着用した時の衣服圧を計測し、体型との関係を検討した。 方法 サンプルは締め付け力に違いがあるパンティストッキング2種、ハイソックス1種。被験者は20代女性30名で、身体形状を把握するため下半身22箇所を寸法計測した。圧力計測は、エアパック式衣服圧測定器(AMI製)を用い、自然立位時と座位時で行った。センサーは腹部前面、同外側、大腿1/2囲外側、同後面、下腿最大囲前面、同外側、同後面、下腿最小囲前面、同外側、同後面の計9点、ハイソックスについては、下腿最大囲前面、同外側、同後面、下腿最小囲前面、同外側、同後面の計6点に貼付した。官能検査は、サンプル着用後なじませたのち、全体の圧感覚、嗜好性、肌触り、装着性、及び腹部・下腿最大囲・下腿最小囲の圧感覚、嗜好性、動作性を評価した。 結果 (1)衣服圧は腹部、大腿部で低く、バラツキも小であるのに対し、下腿最大囲前面で最も大きな値を示し、バラツキも大で、被験者の下肢形状が影響していると考えられた。(2)ハイソックスでは、下腿最小囲後面が大きな圧力でバラツキも大であった。
  • 斉藤 秀子, 薩本 弥生, 嶋根 歌子, 土肥 祥司, 井上 真理, 大泉 幸乃, 小柴 朋子, 田村 照子
    セッションID: P-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 現在数多くの種類が販売されているストレッチ製衣服の設計にあたり、各個人の体型による衣服圧のばらつきがどの程度であるかを検討する必要がある。本研究では、ストレッチ製品の内、ガードル、スパッツおよびサポーターについてとりあげ、着装時の衣服圧を測定し、アイテムごとの体型による衣服圧の違いについて検討した。
    方法 被験者は通常Mサイズを着用している健康な女子30名である。立位、座位時について、ガードルはハード、ミディアム、ソフトの3種、下肢を覆うストレッチ製衣服としてハード、ソフトタイプのスパッツおよびサポーターの3種、計6アイテムを着用した時の衣服圧をエアパック法(AMI社製衣服圧計)により測定した。測定部位は、ガードルでは、最小胴囲前面、外側、腹部前面、外側、臀囲外側、臀部後突点、大腿囲内側、前面、外側の9点、スパッツとサポーターについては、最小胴囲前面、腹部前面、大腿囲内側、前面、外側、後面、膝囲外側、下腿最大囲前面、外側、後面の10点とし、これらの部位の身体計測を行った。なお、ガードル、スパッツ、サポーターはいずれもショーツ、パンティストッキングを着用した上に着用、衣服圧の測定を行った。
    結果 (1)ガードルでは、衣服圧はハードで最も大であり、そのばらつきも大の傾向を示した。(2)スパッツとサポーターでは、衣服圧は大腿囲ではサポーター、膝囲、下腿ではスパッツのハードで大の傾向があるが、衣服圧のばらつきについて一定の傾向は見られなかった。
  • 下腿および足部の容積変動に関連して
    松井 瑞樹, 丹羽 寛子, 三野 たまき
    セッションID: P-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    近年スーツ着用時にもハイソックスを履くようになり,脚の整容効果を目的とした多種類の着圧ハイソックス(以後Aソックスとよぶ)が市販されるようになった.むくみを気にする人は圧の高い製品を選びがちであるが,その実際の整容効果と生体に及ぼす影響は未だ明らかにされていない.そこで,まず下腿および足部の容積変動を詳細に調べ,ついで快適で効果的な補正が可能なハイソックスの設計条件を検討した.被験者は19~23歳の女子8名であった.フ゜ラスチック板から自作した測定ブーツ(測定誤差4ml)を用いて,下腿および足部の容積を水置換法によって測定した(水温は29.6±0.6℃).実験1:被験者1名により彼女の月経2サイクルにわたる毎日,8時と16時以降の一日2回(測定間隔は8時間以上),下腿および足部の容積を測定した.次に全被験者において椅座位と静立位における下腿および足部の容積を測定した(測定間隔は4時間以上).実験2:Aソックス,通常ハイソックス(以後Bソックスとよぶ),サホ゜ーターを用いて,静立位時の下腿および足部の容積変化を調べた.靴下着用前後の比率尺度による圧感覚を申告させ,その時の靴下圧も測定した.結果1:下腿および足部の容積は日々変動したが,朝より夕で41±28ml,椅座位より立位で50±58ml有意に増加した(α≦0.05).Aソックスの圧はどの部位でもBソックスよりも有意に高く,圧感覚も有意にきついと評価された.足部の容積は両者間で差がなかったが,下腿部ではAソックス着用時に容積が有意に減少した.つまり,加圧によって整容効果が期待できる部位は下腿部であることがわかった.そこで,サホ゜ーターを用いて下腿部のみを加圧したところ,足部を加圧しなくとも下腿部はAソックスと同程度の補正効果があることがわかった.
  • ―特に手掌皮膚温に着目して―
    關 麻依子, 三野 たまき
    セッションID: P-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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     寒冷時における手掌の冷えを改善するための方法を,手掌皮膚温を指標として調べた.被験者は20~22歳の成人女子10名であった.前夜の睡眠時間,食事内容と摂取時刻,服装,測定時刻等を統制した上で,皮膚温をサーモトレーサー(NEC三栄,TH-3102MRS,分解能0.08℃)を用いて測定した.実験1(全被験者):皮膚温の測定日には彼女らの同一月経周期の高温期かあるいは低温期の隣り合った2日間を選び,一日は起床時の寝室温を約22.4±2.6℃と高く設定(暖条件とよぶ)し,対の他日は調節せずに約9.1±1.2℃と低く保った(寒条件とよぶ).すると,暖条件の基礎体温は寒条件のそれに比べ0.3±0.2℃,手掌皮膚温は0.9±0.8℃(中立温域に設定した人工気象室内で10時に測定)有意に高くなった(ともにα≦0.01).実験2(被験者1名):中立温域より4℃低いやや肌寒い条件下で,頸・膝・踵・足底部を局所被覆(同一面積(236cm2)に作成したポリエステル100%のフェルトの実験着)したところ,手掌皮膚温は膝・踵・足底部を被覆すると0.3±0.4℃~0.4±0.5℃有意に高くなった(α≦0.01).比率尺度による温冷感覚(Y)と手掌皮膚温(X)との間には,どの部位を被覆した時にも有意な回帰直線が得られた.これらの直線からY=0(ちょうど良い)の時のXをそれぞれ求めると,頸・膝・踵・足底部被覆の順に,26.4・28.9・28.6・28.6℃となった.すなわち,頸部を暖めると暖かいと感じるが,手掌皮膚温は他の部位を被覆した時に比べ,高くならないことがわかった.これらのことから,冬に起床時寝室温を22℃程度になるように調節したり,やや肌寒い時に膝・踵・足底部を被覆すると,手掌の皮膚温を上げる効果があることがわかった.
  • 前田 亜紀子, 山崎 和彦, 栃原 裕
    セッションID: P-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】本研究の目的は、濡れた衣服の影響について、気温、衣服様式、水分率、作業強度の各条件を組合せ、生理・心理的観点から観察することであった。 【方法】被験者は健康な成人女子11名であった。人工気候室は、気温30、25、20℃(相対湿度は80%一定)に制御された。衣服様式はスウェット上下(様式S)とTシャツ短パン(様式T)とした。以上より5種条件(30S, 30T, 25S, 25T, 20S)を設定した。衣服の濡れ条件は、D(乾燥)、W1(湿った)、W2(びしょ濡れ)の3種とし、全衣服重量の平均は、様式Sでは各々819, 1,238, 2,596g、様式Tでは各々356, 501, 759gであった。各濡れ条件において、安静期と作業期を設けた。作業期における踏み台昇降作業のエネルギ代謝率は2.7であった。測定項目は、酸素摂取量、直腸温(Tr)、平均皮膚温(Tsk)、および主観申告値とした。 【結果】酸素摂取量は、衣服重量および寒冷ストレスの影響を受けて変化した。Trの値は、条件25Tと20Sでは漸減した。Tskは環境温に依存して漸減し、特に条件20Sにおいては著しく低下した。本研究の要点は次の通りである。1) 濡れた衣服を着用した場合、気温30℃では着衣の工夫により温熱ストレスは最小に止めることができる。2) 気温25℃以下では、軽装の場合、寒冷ストレスが生じ得る。3) 衣類が乾燥状態であれ濡れた状態であれ、全身温冷感が中立であるとき、Tskは約33℃であった。4)濡れた衣服条件における特色は、全身温冷感が「冷たい」側へシフトするとき、平均皮膚温が著しく低下することである。
  • 丸田 直美, 田村 照子
    セッションID: P-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 わが国の環境に適した快適な着衣のあり方を検討するためには、日本で市販されている着用衣服の顕熱・潜熱抵抗値の測定を行い、データベース化することが重要であると考えられる。そこで、本研究では日本人成人女性標準体型の発汗サーマルマネキンを用いて女性用日常衣服の顕熱・潜熱抵抗の測定を行い、その評価法の確立と共に材料特性との関係について検討を行った。
    方法 サーマルマネキンは、田村らが開発した可動型発汗サーマルマネキンで、日本人成人女子標準体型マネキン(HQL・七彩製)が使用されている。測定衣服は女性用単品衣服(肌着から外衣まで、靴を含む)28種と組み合わせ衣服7種(春秋季、夏季、冬季、梅雨季)で、各衣服着用時の全体・部位別の顕熱・潜熱抵抗を測定した。測定条件は、顕熱抵抗においては環境条件20℃・50%RH、マネキン表面温は人間の平均皮膚温分布(平均皮膚温32.9℃)、潜熱抵抗においては環境条件33℃・50%RH、マネキン表面温33℃均一とした。両実験とも定温度制御とし、測定時間は安定状態に達してから30分間で、1分間隔でデータを採取した。
    結果 主な結果は以下に示す通りである。1)本実験に用いた単品衣服の有効顕熱抵抗は0.01~0.57 clo、有効潜熱抵抗は0.001~0.13 kPa・m2/Wに分布した。2)組み合わせ衣服の有効顕熱抵抗は0.37~1.14 clo、有効潜熱抵抗は0.024~0.033 kPa・m2/Wに分布した。3)単品衣服の抵抗値の和から組み合わせ衣服の抵抗値の予測、顕熱抵抗値から潜熱抵抗値の予測の可能性が示唆された。
  • 深沢 太香子, 栃原 裕, HAVENITH George
    セッションID: P-8
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    [目的] 四肢は体温調節を行う上で,有効な放熱・水分蒸散部位である.よって,この部位における熱・水分移動が抑制されると,温熱的不快感がもたらされると考えられる.この温熱的不快感を表現するのに皮膚濡れ率 w (-) は便利な指標であり,w<0.3 までは,温熱的快適性が維持されるといわれている.本研究では,実験衣服に工夫を加えることにより,全身の w を温熱的快適性が維持される 0.3 近傍に保つ一方,局所 w を部分的に著しく高い状態に維持する実験を行い,局所 w が全身の温熱的快適性に及ぼす影響について検討する.
    [方法] 本研究では,胸(胸と腹),背(背と腰),腕,大腿を対象局所とした.実験は,健康な男子大学生 8 名を対象とした.被験者は,実験衣服,下着,靴下,運動靴を着用し,気温 22 °C,絶対湿度 10 mmHg,気流 0.2 m/s に制御された人工気候室内で 15 分間の安静椅座位を保った後,4.5 km/hr の歩行運動を 45 分間行った.実験中,全身 8 部位の皮膚温と対象の 4 部位の皮膚露点温度を連続的に測定した.全身と局所の温熱的快適感は,5 分ごとに申告させた.
    [結果] 本実験より得られた全身および局所 w は,意図したとおり,全身では 0.3 近傍に維持され,逆に,目的とする局所では高い状態に維持できた.その結果,体幹である背と胸は,それぞれ w<0.47, w<0.55 までは,局所的な温熱的快適性が維持された.四肢である腕と大腿は, w<0.37 までは,温熱的不快感を覚えなかった.他方,全身の快適感については,本研究の範囲では,全身の w が 0.35 に達するまでは全身の温熱快適性は維持された.これらの結果より,四肢と全身が不快感を覚え始めるのは,同程度の w に達してからではあるものの,全身の温熱的快適性は局所の温熱快適性の影響をほとんど受けないことが示された.
  • 森 由紀
    セッションID: P-9
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 ハイヒールについては、様々な弊害の指摘にもかかわらず、若い女性の間では多く着用されている。先に、その着用による疲労がストレスとなり、指標となる唾液中コルチゾール値が増加することを歩行実験により確かめた。今回は、通常生活の中でも同様のことがいえるのか、また、その影響は就寝前まで持続するのかについて、検証を行った。
    方法 被験者は健康な女子学生9名で、実験靴として、ハイヒールと対照となるスニーカーを用いた。被験者は、午前8時頃、まず、いずれか一方の実験靴を着用し、自宅から大学に向かい、夕方までの授業後、午後6時頃に帰宅という通常の生活を過ごす。その間、起床直後から就床前まで計5回の唾液採取を行い、コルチゾール値を測定した。自覚疲労調査も併せて行った。同様のリズムとなるよう、1週間後に、もう一方の靴による実験を実施し、これらの結果について、実験靴間の比較検討を行った。なお、実験靴の着用順序はランダムとした。
    結果 スニーカー着用時のコルチゾール値については、早朝最も高く、その後漸次減少し、夜遅くには微量になるという正常なサーカディアンリズムを呈したのに対し、ハイヒール着用時には、夕食前や就床前に上昇傾向を示す被験者がみられた。起床直後のコルチゾール値を100として、その後の変化の割合を算出した結果、就床前には8名の被験者において、ハイヒール着用時が高く、平均値が40.0%に対し、スニーカー14.2%であり、両者に危険率5%で有意な差が認められた。自覚疲労調査結果でも、ハイヒール着用時において、疲労の訴え頻度が高かった。
  • 角田 由美子, 寺嶋 眞理子, 石川 亜沙美, 中島 健
    セッションID: P-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 ここ数年、ヒールが高くて細いスチレットヒールの婦人靴が流行している。これらの靴のトップピースは、歩行により著しい摩耗や変形あるいは脱落を受けやすいといわれているが、その実状は明らかにされていない。したがってトップピースの形状や素材が耐摩耗性におよぼす影響を靴の着用試験により検討した。
    方法 トップピースの耐摩耗性の現状を明らかにするために、低価格のスチレットヒールの婦人靴を収集し、これらのトップピースについてISO 20871により摩耗量を測定した。次にヒール高5cmの細いヒールと太いヒールの婦人靴に同じ素材のトップピースをつけて、女子学生10名を被験者として10万歩までの着用試験を行った。さらにトップピースの素材による摩耗量の違いを明らかにするために、細いヒール靴に各種の素材(ゴムやポリウレタン)のトップピースをつけてそれぞれ3万歩まで着用した。なおゴムのトップピースは、太いヒール靴についても同様に着用試験を行った。これらについてトップピースの摩耗量と寸法の変化の測定および官能評価を行った。
    結果 (1)市場調査の結果、著しく摩耗量が多い靴が観察された。(2)細いヒール靴の10万歩後の摩耗量および形状の変化は、太いヒール靴よりも著しく、ヒールの細い靴が摩耗しやすいことが明らかとなった。(3)ゴムのトップピースを細いヒール靴につけて着用すると、被験者の20%が1万歩で鉄芯が見える状態まで摩耗し、他の被験者は3万歩までの間に同様な状態が観察された。しかし、ゴムを太いヒール靴につけた場合には、ほとんど摩耗が認められなかった。これらからヒールの太さにより、トップピースの素材を選定しなければならないことが明らかとなった。
  • 石原 世里奈, 大図 雅美, 芳住 邦雄
    セッションID: P-11
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    <目的>ヘアカラーが私達の生活に浸透してきている現在では、ヘアカラーが与える外見の印象もかなり変わってきていると思われる。本研究では女子大学の学生のヘアカラーに関する意識調査と現状の把握を行った。特に、ヘアカラーとファッションあるいは就職活動との関連性、また、職場でのヘアカラーの実状について着目した。
    <方法>ヘアスタイルおよびヘアカラーに関するアンケートおよび実態調査を行った。対象人数は、女子大学の学生341名である。第二はファッション雑誌「ZIPPER」の写真モデル150人を対象とした。判定方法はJHCA日本ヘアカラー協会のレベルスケールを用いた。
    <結果および考察>対象女子学生の、約35%の人が黒髪で約65%の人がヘアカラーをしていた。また、ヘアカラーをしている人の平均的な明るさは、およそレベル7であった。分布も全体でレベル5から8の範囲が多かった。一方レベル9、レベル10程度の明るさも多少見られた。レベル9以上の明るさには少し抵抗を感じているようであった。
     ZIPPERでは、約25%弱の人が黒髪で約75%の人がヘアカラーをしている。またヘアカラーをしている人の平均的な明るさは、およそレベル9と少し明るめであった。
     ヘアカラーをしている人の意識は、ファッションやヘアスタイルに合わせて選んでいると判った。一方では、雑誌や学生の統計からもみられるように、髪色にも社会的に受け入れられるいわば「常識的な範囲」が存在しているように思われる。ヘアカラーにおいてもマナーとしての意識を持ち環境条件に合った髪色にすることで社会的に受け入れられると結論される。
  • シリコーン系柔軟仕上げ剤の敏感肌者等に対する有用性
    秋元 宏, 宇野 哲也, 宮原 岳彦, 江川 直行, 宮坂 広夫, 掬川 正純
    セッションID: P-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的
    生活者が衣類着用時に受ける衣類の摩擦について実態を把握するとともに、肌と衣類との摩擦低減効果のある柔軟仕上げ剤(以下、柔軟剤)の肌への影響について調べる。
    2.方法
    試験剤:カチオン性界面活性剤系柔軟剤(以下、汎用柔軟剤)、ポリエーテル変性シリコーン柔軟剤(以下、シリコーン柔軟剤)
    試験布:綿ブロードおよびポリエステルサテン。試験剤にて布に柔軟仕上げ処理をし、非使用を含む3種の試験布を作成した。
    動摩擦係数:平面接触子に試験布を貼付し摩擦係数測定装置にて前腕内側上を滑らせて測定した。
    使用試験:敏感肌、アトピー性皮膚炎、乾皮症等の皮膚炎を有する者を被験者としシリコーン柔軟仕上げ剤を洗濯時に使用させる方法で、1ヶ月間冬季に実施した。また、一部の被験者については約1年間通して使用させた。
    3.結果
    3種の試験布のうちシリコーン柔軟剤で処理した試験布の動摩擦係数が最も低く、非使用の試験布と比較しその値は0.1も低減していた。また、汎用洗剤および試験剤を用いて30回繰り返し洗濯をしたバスローブの着用感を官能による一対比較法にて試験した。その結果、すべりやすい、やわらかい等の項目に関してシリコーン柔軟剤で仕上げた衣類の着用感は良好であった。
    また、使用試験ではシリコーン柔軟剤で仕上げた衣類の着用で7割以上の被験者が「肌あたりの良さ」や「引っかからない感じ」を実感し、半数以上の被験者で肌の「乾燥」や「かゆみ」などが和らぐことが医師により確認された1,2)。さらに、約1年の長期使用によっても、有害事象および治療を妨げることは無かった。7割以上の被験者が「肌触りのよさ」を実感し、また、「今後も使用し続けたい」との意向を示した。
    文献
    1)永島敬士他;診療と新薬,43(9),p.912-917(2006)
    2)渡辺晋一他;診療と新薬,44(2),p.27-32(2007)
  • 青山 喜久子, 岩佐 宏美
    セッションID: P-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】ニット地は、身体の運動機能に対応する伸縮性を有するため、近年、下着から外衣まで用途が広がり需要が増加している。ニット縫製において、ニット地に適合した縫い特性を得るためには、縫製条件及び布地の物理的特性と縫い特性の関係の把握が重要である。本研究では工業用環縫いミシンを用いて縫製実験を行い、縫製条件及び布地の物理的特性が縫い特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 【方法】実験には、差動送り機構を有し、二重環縫目と偏平縫目のステッチ形式(JIS:406、407、602、605)が設定可能なミシン(JUKI MF-7723)を使用した。ステッチ形式は主として406(針糸2本、ルーパー糸1本)を用いた。縫製条件は、押え金圧力、縫い糸張力、差動比を数段階変化させた。送り歯の主送り量をLA、副送り量をLBとすると、差動比はLB/LAで表され、LB/LA<1は伸長縫い、>1は縮み縫いとなる。用いた布地は綿100%のスムースで、試験布を2枚重ね、縫製条件を種々組み合わせてコース方向に縫合した。縫製後、単位長さあたりの縫糸消費長、縫目引張り強伸度を測定し、縫目付近の外観を観察した。 【結果】ステッチ形式は2本針を3本針に変化させると(406→407、602→605)、2本針のステッチに比べて、縫目引張り伸長率が低くなり、縫目引張り強度が増加する傾向がみられた。ステッチ形式406の縫製実験の結果は、LB/LAの増加にしたがい縫糸消費長及び縫目引張り伸長率は減少傾向にあり、2本の針糸消費長と伸長率の間には正の相関が認められた。また2本の針糸張力の増加は縫目引張り伸長率を低下させるが、ルーパー糸張力の増加は針糸消費長を増加させるため伸長率を高くする傾向がみられた。
  • 川畑   昌子, 伊地知 美知子, 小山  京子, 佐藤 由紀子, 知野 恵子, 豊田  美佐子
    セッションID: P-14
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【 目 的 】 15回の授業で浴衣を製作するために、これまで身たけ・柄合わせ・袖たけの設定について報告した。浴衣製作の手縫い技法は直線縫い、耳絎け、三つ折り絎け、本絎けなどの縫いと要所々に用いられる留めがある。留めは、美しく丈夫に仕上げるための技法である。 被服実習経験が少なく、背・脇など直線を縫うことでさえ時間がかかる学生にとって、留めを理解しその技法を習得するには更に時間を要する。本報では留め技法の一つであるえり先留めを取り上げ、先人達の教えを参考とし学生自身の理解度を高め、より実習しやすい方法について検討する。 【 方 法 】  高月資料を中心に留め記載について文献を調査した。種々のえり先留め方法について実物標本を製作し、留め方法を比較検討した。 【 結 果 ・ 考 察 】  現在女物浴衣製作のえり形態は、ばちえりが多い。古い文献には、裁断についての詳細な記載はあるが、縫い方はごく簡単な記述にとどまり、図については掲載されていないものが多かった。えり先留めは今日のようにどこからどのように針を出し、どのようにして留めるかなど詳しい記述は見られず、全く記載がないものもあった。これはkimonoを日常着としていた時代、ほどいて洗い張りをし縫い直すことを考慮していたためではないかと考えられる。現在、えり先留めの方法は図解記載が多い。記載内容は1,針を入れる位置、2,すくう織り糸の本数、3,すくう方向についてさまざまあり、力布や裏えりを用いたものなどもみられた。留めはじめは、表えり裏側から針を入れるが、裏えり裏側から始める方法もみられた。
  • 山内 幸恵, 大村 知子
    セッションID: P-15
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 動作により人体表面の皮膚は動きを伴う関節を中心に伸ばされる.これに衣服が対応できない場合,ひきつれやだぶつきが生じ,着くずれの原因となる.58回大会において,ローライズパンツにおけるウエストラインの動作性について報告した.本研究では,さらに下腿部において,動作により生じるパンツの「ずれ」を明らかにする目的で検証を試みた.
    方法 着用実験時期は2006年8月,被験者は女子大学生4名であった.実験衣は素材や構造の異なる4種類のパンツそれぞれ5サイズの計20着試作した.着用実験では,立位から椅座と立位から蹲踞への動作を行い,動きやすさに関する官能評価を行った.動作の撮影は,可視光対応カメラ4台と大村らが考案した赤外線発光マーカー対応カメラ4台の計8台で4方向からパンツと人体表面の動きをとらえた.「ずれ」の計測部位は,ウエストライン3点,ヒップライン2点,ニーライン2点,アンクルライン2点の計9点であり,ヒューテック株式会社製の三次元動作分析システム「Mpro-3D」を用いて解析を行った.
    結果 ずれの方向は部位によって異なったが,量は開口部(ウエストラインやアンクルライン)で大きく,動作により膝関節や股関節が最も屈曲したとき最大となる傾向にあり,そのタイミングはアンクルラインで早かった.官能評価と「ずれ」は必ずしも一致するわけではなかった.
  • 下坂 知加, 中田 いずみ, 石垣 理子, 猪又 美栄子
    セッションID: P-16
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 上半身用衣服における袖幅のゆとり量の差異が,上肢動作に与える影響について,着用者の主観的な評価である官能評価,衣服と人体の接触圧である衣服圧,動作時の筋活動を捉える筋電図の三つを用いて検討した.
    方法 実験服は半袖衿無しの前開きブラウスとし,袖幅を3水準(実験服A:上腕最大囲+11cm,実験服B:上腕最大囲+7cm,実験服C:上腕最大囲+3cm)に設定した.被験者は20歳代の女子5名である.実験動作は,右上肢5動作(90度前挙,180度前挙,90度側挙,180度側挙,後挙)とし,全被験者立位にて二回繰り返し行った.官能評価は静止時の拘束感と動作時の動きやすさについて5段階で行い,衣服圧は上腕最大囲の位置で中央部と後部の二箇所を測定した.筋電図は上腕三角筋の前部,中部,後部の三箇所を測定し,同時に肩関節の角度も測定した.ビデオカメラにより正面と側面の二方向から記録撮影を行った.
    結果 (1) 本実験で用いた三枚の実験服は,身頃,袖ぐりが同寸にも関わらず,袖幅のゆとり量によって,官能評価が異なっていたことから,袖幅が,身頃,袖ぐりの「きつい,ゆるい」の感覚に影響を与えていることが分かった.(2) 衣服圧の分散分析の結果,袖幅のゆとり量が多い実験服Aでは,動作は有意でなかったが,実験服B,Cでは有意であった.(3) 90度側挙では,袖幅のゆとり量が少なくなる程,筋電図の振幅が大きくなる傾向にあった.一方,90度前挙,180度前挙,後挙では,実験服Cにおいて筋電図の振幅が小さくなる傾向が見られた.これは,袖幅のゆとり量が少ないことで上肢動作が拘束され,動作が変化したためと考えられる.ビデオ画像からも上肢動作の変化が観察された.
  • 上肢動作時の筋負担の定量的評価
    石垣 理子
    セッションID: P-17
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】上半身用衣服の動作適応性評価への応用を前提として、負荷水準を変化させた時の上肢動作の筋活動の定量的評価を試みた。手首に装着した重量の違いが上肢動作時の三角筋の活動量に与える影響について筋電図による測定実験を行い、衣服の動作適応性評価に有効だと思われる上肢動作の抽出を行った。

    【方法】健康な若年女子10名を被験者とし、負荷量が把握しやすいウエイトベルトを手首に装着し、負荷重量が与える上肢動作時の筋活動への影響を測定した。負荷水準は、負荷なし、0.5kg、1kgの3水準とした。実験動作として、上肢90度前挙、180度前挙、90度側挙、180度側挙の4つを設定した。被験筋は、肩関節の運動に関与する右腕の三角筋前部、中部、後部の3つとし、上肢動作時の筋電位を表面電極にて同時に導出した。筋活動の定量化指標としては、積分値(iEMG)を動作時間で除した平均筋電図(mEMG)を求め、更に、負荷なしの筋活動量で規格化して解析に用いた。

    【結果】負荷重量と三角筋の活動量であるmEMGの間に概ね相関が見られた。衣服の動作適応性評価のための動作および測定筋として、上肢の前挙および側挙動作における三角筋の導出が有効であり、特に90度前挙および側挙の動作は、負荷強度の検出力が高いことがわかった。また、一定条件でコントロールされた上肢動作の筋負担の評価において、積分値を動作時間で除したmEMGの有効性が確認された。
  • ―片手でのかけはずし操作と日常動作における使い手の比較―
    高橋 美登梨, 佐藤 悦子
    セッションID: P-18
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉ボタンのかけはずしは,手指の巧緻性を必要とするので,片手での操作が容易にできるには,どのような要因が介在するかを明らかにすることが重要である。片手での動作は,箸を使うなど,利き手が優位であるといわれている。しかし,ボタンのかけはずしは,両手で操作することが多く,片手での操作は利き手と非利き手による差異や側性については不明な点が多い。本研究では,片手でのボタンかけはずし操作は,日常生活で用いる道具の操作性と比較した場合,どの程度「利き」が関わることなのか等を把握するために,日常動作等14項目を設定して質問紙による調査を行った。これらの調査は,被験者のボタンかけはずし動作実験と併行して行った。今回は,質問紙による調査結果を報告する。 〈方法〉被験者は健康な男子大学生30名である。質問内容は,先行研究の利き手テスト*を参考に,衣生活に関する片手動作を設定して計14項目とした。各項目について,(右手,どちらかというと右手,決まっていない,どちらかというと左手,左手)で回答した。各項目の回答からカテゴリーを数値化して度数を求め,その分布から使い手の側性について考察した。(*利き手テスト:エディンバラ,H.N.,チャップマンらによる 〈結果〉側性の高い項目は「片手でボールを投げる」「はしを使う」「文字を書く」が挙げられた。衣生活に関する項目は側性が低く,特に片手で「ボタンをかける」「ドットボタンのとめはずしをする」は,決まっていないといえる。以上のことから、片手でのかけはずしは利き手が関与せず,打ち合わせの違いや着慣れが動作の容易性に影響することが示唆される。
  • 千葉 桂子, 菅野 悦子
    セッションID: P-19
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年ユニバーサル・デザインによる衣服設計・商品化が試みられ,徐々に私たちの手の届くものになりつつある。しかしながらそれらの多くは衣服そのものであり,装身具やバッグ等に関連するものはほとんどみられない。衣服の着装を考える場合には装身具を身につけることによってさらによいファッション表現が期待できる。本研究では上肢に不自由がある場合を想定し,装身具の装着動作について動作分析の手法を用いて検討する。それにより障害者のおしゃれを支援するための基礎的情報を得る。 方法 被験者は若年女子2名(利き手は被験者Aが左手,被験者Bが右手)とした。装身具等試料はショルダーバッグ,コサージュ等6種類とした。上肢に不自由がある場合を想定し,肘拘束シミュレーター,手首サポーター等を用い,左・右上肢それぞれを以下の条件で拘束した。条件(1):肘・手首の2箇所を拘束,条件(2):肘・手首・指先の3箇所を拘束。被験者に試料の装着およびはずす動作を各条件下において行わせ,ビデオ撮影を行った。その動画をPCに取り込みDartfish4.0により分析を行った。 結果 ショルダーバッグについては,両被験者とも所要時間の長さと動作直後に尋ねたやりにくさには顕著な関連性はみられなかった。両者を比較すると,左利きの被験者Aはどちらの上肢を拘束されても両上肢を使おうとする状態がみられた。しかし,被験者Bは左上肢を拘束された場合には右上肢のみで装着動作を行うという違いがみられた。上肢に不自由がある場合のコサージュ装着には,留めピンに関する検討だけはなく衣服を押さえる側の上肢動作域および衣服の伸びについて捉える必要があることがわかった。
  • 與儀 由香里, 吉田 麻未, 斉藤 秀子, 呑山 委佐子
    セッションID: P-20
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 靴下を履くという動作(自助)および、介護の現場で靴下を履く動作を介助する(介助)場合、口ゴムの圧迫が小さい靴下は履かせやすく、履きやすいという利点がある。一方、このような高齢者を対象として設計された靴下は、履き心地に問題があるという指摘もあり、両者の観点からの検討が必要である。本研究では靴下の自助、介助、履き心地と、靴下を履いたときの衣服圧との関係について調べるとともに、履き口にひもをつけた靴下の履きやすさについて検討した。
    方法 被験者は、健康な女子10名、試供靴下は市販の靴下、口ゴムの圧迫が小さい「ゆる靴下」の試作靴下計12種である。靴下の自助、および介助、履き心地の評価を、5段階指標により、素手の場合および、疑似体験手袋をつけた場合の2条件について行った。衣服圧はエアパック法(AMI社製衣服圧計)により、人体とマネキンの靴下着装時について4点測定した。さらに、履き口のひもの種類やつけ方が異なる靴下について同様に検討した。
    結果 衣服圧の小さいいわゆる「ゆる靴下」は、自助、介助ともに評価が高い、衣服圧が大きい靴下は介助の場合評価が低かった。ひも付き靴下はひもを履き口の左右につけた場合、ひもの長さが10または15cmの場合、評価が高い傾向を示した。
  • 仙台浴衣と仙台手拭いについて
    川又 勝子, 佐々木 栄一
    セッションID: P-21
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目 的】 著者らはこれまで昭和初期から仙台地方で多量に生産され、東北・北海道に広く販売された型染め製品の「浴衣」と「手拭い」について調査してきた。当時の製品は殆ど失われており、調査対象とした染色工場(仙台市名取屋染工場)に染色品として現存しているものは少なかった。しかし、型紙については多数保存されていることが分かり、これまでに第1型箱147枚の型紙について型紙の調査と文様の電子保存、破損・欠損箇所の電子修復を行ってきた。今回は新たに、第2型箱232枚より120枚を抽出し、調査と電子保存・修復を行った。
    【方 法】 デジタルカメラ(約800万画素)を用いて型紙を2箇所に分けて撮影し、同時に型紙の計測と破損・欠損箇所を調べ、型紙の分類を行った。また、撮影した画像はパソコンの汎用画像処理ソフトを用いて繋ぎ合わせて一枚の型紙画像を作成し、その段階で若干の修復・加工を試みた。さらに、大きな破損・欠損箇所の修復、染色品復元時の文様の歪みや不自然さを無くすための修復・加工も行った。
    【結 果】 折れ曲がりや破損・欠損箇所のある型紙は62枚と全体の約半数で、これらについての電子修復を行った。
    形紙の種類は、前回までの調査と異なり「名入れ以外の型紙」が102枚と調査数の8割以上を占めたが、同一の文様構成の型紙が12組あった。「名入れ型紙」では、15枚が手拭い用型紙であり浴衣用は4枚であった。また、文様別分類では割付文様57枚、植物文様が54枚、文字19枚、自然文様16枚、器物文様10枚、動物文様7枚、その他20枚であり、これらが複数組み合わされた複合文様型紙が62枚、単一文様型紙が58枚とほぼ同数であった。
  • 野口 雅子, 森 俊夫
    セッションID: P-22
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ファッションデザイン画を評価する場合,多くは教師の主観的な判断によって評価される.客観的評価が必ずしも主観的評価よりも上位であるとはかぎらないが,評価する教員の主観によるくい違いが感性教育を実践する上で重要な課題となる.そこで,本研究では,高校生が描いたファッションデザイン画について周波数解析を行い,デザイン画の1/fαゆらぎを分析すると共に,ゆらぎ係数(α値)と教師の評価点との関係を検討した.
    方法 高校生の描いたファッションデザイン画はカラースキャナを用いて,画像サイズ512×512ピクセル,解像度72dpiの条件で取り込まれた.周波数解析は画素の周波数成分によってファッションデザイン画を記述しようとする方法である.離散的フーリエ変換により,算出されたパワースペクトルは各周波数成分の寄与を示し,周波数に対して2次元的に表示されるので,1次元パワースペクトルに変換された.
    結果 一次元パワースペクトルの周波数に対する依存性を調べたところ,両者の両対数プロットにおいて,いずれの試料もよい直線関係が得られたので,ゆらぎ係数のα値を算出した.パワースペクトルの周波数依存性からゆらぎの性質を推定し,これらのゆらぎの種類から,ファッションデザイン画をいくつかのグループに大別することができた.教師の評価点とα値との関係を比較したところ,評価点数が低いデザイン画ほど,αが1より大きな値を示したり,小さな値を示したが,点数が高いものほどα=1付近に分布する傾向がみられた.したがって,人に美しさや心のやすらぎを与える1/fゆらぎを示すファッションデザイン画は教師の主観的な判断による評価点が高い傾向にあることが分かった.
  • ―VBAを用いた動的角度の解析―
    森島 美佳
    セッションID: P-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    緒言 本研究では、衛生用マスクの装着感と性能との改善策を提案することを、長期的な目的としている。研究の一環として、花粉症用マスクを実験試料とし、マスクと顔面のフィット性能について、角度の観点から検討している。実験では、2台のシェイプセンサShapeDaq S720(Measurand社製)をマスクと顔面にそれぞれ設置し、母音を発音した際のそれらの動的角度を計測する。これまで、得られた実験データを解析する際、開口時および閉口時の該当データを判別ことは困難であり、多大な時間を費やしてきた。このため、解析時間の削減および今後の汎用性を目指し、ユーザビリティを配慮したフィット性能解析プログラムを開発した。本発表では、開発プログラムの詳細とその評価について報告する。
    方法 プログラムの開発環境は、Win ver.5.1、VBA ver. 6.4、Ms Excel ver.11.0である。プログラムを用いた解析手順は、1.計測データの導入、2.有用データの抽出、3.マウス操作による開口時および閉口時の該当データの判別、4.フィット性能に関するパラメーター(相関係数、p値、共分散、差の絶対値の最大値)の自動算出という流れである。
    実装結果 開発プログラムを用いて実験データを解析した結果、所要時間はプログラム未使用時の1/3に削減された。また、本発表では、素材、デザインが異なる試料4種類のマスクを採用し、被験者1名の頬部分での実験データの解析結果についても併せて報告する。
    謝辞 本研究を行うにあたり、試料をご提供頂きました玉川衛材株式会社に感謝申し上げます。
  • 大谷 恭子, 谷田貝 麻美子
    セッションID: P-24
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    《目的》 近年、非ホルムアルデヒド系DP(Durable Press)加工剤として実用化が期待されているもののひとつに、クエン酸がある。ここでは、クエン酸処理を施した各種繊維の織物について、DP加工の副次的効果として発現する消臭性能に着目し、生活環境中の代表的な悪臭物質であるアンモニアの吸着性を調べた。
    《方法》 (1)クエン酸処理: セルロース系繊維4種、タンパク質系繊維2種の平織布を、60g/Lクエン酸水溶液(触媒としてホスフィン酸ナトリウムを添加)に浸漬し、予備乾燥の後150℃でキュアリングした。(2)消臭試験: 次の2つの方法で行った。検知管法: アンモニア標準液(28%アンモニア7.2mL/水100mL)5μLを注入した三角フラスコ内(初期ガス濃度105ppm)に、クエン酸処理または未処理試験片を密閉し、120min後のガス濃度を検知管で測定した。重量法: 絶乾後の試験片を28%アンモニアと共にデシケータ内に72h放置し、試験片の重量変化を測定した。
    《結果》 検知管法では、未処理試験片と共存させた場合の120min後のアンモニア濃度は、セルロース系繊維で80~100ppm、タンパク質系繊維で20~40ppmであった。処理試験片と共存させると、繊維の種類によらず残存アンモニア濃度はほぼ0ppmとなった。重量法では、試験片の重量増から求めたアンモニア吸着量は、繊維の種類によらず処理布の方が未処理布より大きくなった。このように、2つの測定法より、クエン酸処理により各種繊維のアンモニア吸着能が向上することがわかった。クエン酸と繊維分子とのエステル架橋生成に与らないカルボキシル基にアンモニアが吸着するためと推測される。
  • 繰り返し使用における放置と水洗の効果
    小原 奈津子, 金井 まゆみ
    セッションID: P-25
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 これまで羊毛繊維に特定の機能を付与することを目的として,いくつかの比較的簡便な化学的処理を検討してきた。先の研究では,羊毛を過ギ酸で酸化して得られた酸化羊毛がアンモニアを極めて速やかに吸収する性能があることを見出した。
    方法 酸化:0℃のギ酸と過酸化水素水の混合溶液中(容積比9:1)に羊毛繊維(浴比1:30)を浸漬し,20分間攪拌した。消臭性の評価:窒素置換した後,34μLの28%アンモニア水および内部基準として17μLのエーテルを注入した500mLの三角フラスコに0.5gの羊毛試料を入れ,フラスコ内のアンモニア濃度の経時変化をガスクロマトグラフで4時間追跡した。この時のアンモニアの初期濃度は約13400ppmである。
    結果 未処理羊毛の場合,フラスコ内のアンモニア濃度は初期の約60%に減少したが,同じ試料で同様の測定を繰り返すと,収着性は徐々に減少し,6回目は,測定4時間後で初濃度の80%のアンモニアが残存していた。同試料を2ヶ月間放置すると,測定4時間後のアンモニアは初濃度の74%であり,収着性はやや回復した。酸化羊毛の場合,1回目の測定では30分でアンモニアは検出されなくなり,極めて高い収着性能を示した。しかし同じ試料で測定を5回繰り返すと未処理羊毛と1回目の測定と同程度の収着量となり,その収着能は低下した。この試料を9ヶ月放置するとその性能はかなり回復し,2時間後アンモニアの残存量は初濃度の2.5%に減少した。さらに5回繰り返し測定後にイオン交換水で洗浄したところアンモニア収着性は再び回復した。これらの結果から,アンモニアの羊毛への収着はイオン結合ほど安定なものではないことが推測された。
  • 小野寺 裕美, 川瀬 豊, 川端 博子
    セッションID: P-26
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)日本女性への普及率がほぼ100%であるブラジャーは、多くの小パーツから構成される繊細なものであるが、一般にどのように取り扱われているのかは明らかにされていない。また、手入れの違いがブラジャーにどのように作用するかの研究もごくわずかである。本研究では、若年女性を対象にブラジャーの使用実態を把握し、理想的な取り扱い方を提示することを目的とする。 (方法)若年女子のブラジャーの使用状況のアンケート結果をもとに、5の銘柄・4段階の洗濯方法を用い、未使用を含む25枚のサンプルを作成し、性能比較(寸法変化・引っ張り伸長特性・表面状態観察)と外観官能検査を行った。顕著な違いの認められた2段階のサンプル10枚については着用官能検査を行った。 (結果)性能比較の結果、ネットの有無に関わらず洗濯機普通コースのサンプルでは、ワイヤー及びカップに形状変化が見られた。手洗いコースのサンプルは外観において未使用サンプルとの差が認められなかった。外観官能検査において、7割の被験者が手洗いコースまでは使うと判断していたことからも、ブラジャーはワイヤー及びカップの形状が使用の可否を決める判断基準となっており、形状を保つためには手洗いが必須であると言える。また、安価な銘柄ほど洗濯による影響が顕著に見られ、デザイン重視で購入しがちな安価なブラジャーにこそ入念な手入れが必要である。着用官能検査では、手洗いのものが全般的に普通コースで調整したサンプルよりも高評価となり、シルエットに関する項目では有意差が認められた。
  • 植竹 桃子, 正地 里江
    セッションID: P-27
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    <目 的> わが国が抱える多くの課題の中で、少子化,女性の社会進出,循環型社会の構築に着目すると、核家族化した育児中の家庭における合理的かつ地球環境を配慮した衣生活を推進すること、の必要性は否定できない。本研究では、衣生活の中で洗濯に焦点をしぼり、育児中の家庭における洗濯の実態を把握し、問題・課題を明確化することとした。
    <方 法>(1)調査対象:東京近郊に居住して、おむつを使用中の乳幼児を育てている母親7名(満22歳~36歳,平均30.9歳)。(2)調査方法:面接調査(基本的に調査対象者の自宅にて実施)。(3)調査内容:家事全般に対する姿勢,家庭洗濯のしかた,洗濯物の乾燥法,使用おむつの現状。
    <結 果>(1)家庭洗濯はほぼ毎日行い、子供用品を中心につけ置洗い・下洗い,仕分け,漂白の手間もかける傾向にある。(2)乾燥機或いは浴室乾燥設備を所有しているのは7名中3名で、その使用は梅雨時や大物を乾かす時に限られている。基本的な乾燥法は屋外干しで、必要に応じて日常生活スペースへの屋内干しを行っている。(3)現在の使用おむつは全員が紙おむつで、紙おむつに対して何らかの問題点を感じながらも、紙おむつの便利さが魅力となっている。(4)布おむつに関しては、干し場等の乾燥に対する懸念よりも、一様に洗濯することへの大変さ,否定感が示された。以上より、育児中の家庭における洗濯に対する姿勢は、一般的な衣服と布おむつでは著しく異なることから、布おむつの使用を推奨する場合には、おむつに対する正しい知識・情報の提供が必要と考える。
  • -生活場面における香りの効用-
    藤井 日和, 川口 直, 江川 直行, 掬川 正純
    セッションID: P-28
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年実施した生活者実態調査において、柔軟仕上げ剤購入時に最も重視する項目として「香りの良さ」を挙げる生活者が増えている事が明らかになっている。柔軟仕上げ剤市場においても「香りの良さ」や「香り持続」を謳った商品が増加しており、生活者の柔軟仕上げ剤の「香り」に対する関心が高まっている事が判る。本研究では生活場面において、柔軟仕上げ剤の香りが生活者にどのような効果を与えるのか調査を行うこととした。
    【方法】自分で洗濯をする20~40代の女性を対象に、香料を配合していない柔軟仕上げ剤及び香料を配合した柔軟仕上げ剤を家庭で1週間ずつ使用して頂き、各柔軟仕上げ剤で処理した衣類を干す時~着用・使用時に感じた効果について評価した。
    【結果】香料を配合した柔軟仕上げ剤を使用した場合、衣類を干す時、取り込む時、着用・使用する時のいずれの場面においても香料を配合していない柔軟仕上げ剤と比較して、柔らかさを高く感じている事が判った。また、防臭効果に対しても有意な差が認められた。本調査より、香りはリラックス、リフレッシュ効果を与える1)だけでなく、柔軟仕上げ剤の主機能にも大きな影響を及ぼす因子である事が判った。
    1)川口ら;日本家政学会第58回大会研究発表要旨集、p101(2006)
  • 処理温度および固体微粒子汚れと生地の種類からの検討
    福田 典子
    セッションID: P-29
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】非水系洗濯は油性汚れの効果的な除去を特徴とする。しかも親水性繊維の膨潤を防ぎ,型崩れのリスクを下げて処理する方法である。洗浄面では溶剤中の土砂や埃などの固体微粒子汚れによる再汚染,管理面では溶剤の人体や環境への影響が課題であり,その対応技術について検討が必要である。これまでに,綿の非水系の洗浄挙動について幾つか報告されているが,毛の再汚染について明らかされたものは十分とはいえない。そこで本研究では石油ベンジン中の固体微粒子汚れによる毛の再汚染性に及ぼす処理温度および固体微粒子汚れと生地の種類の影響について検討することを目的とした。 【方法】石油ベンジン(1級)中における固体微粒子汚れ4種(酸化鉄3種,カーボンブラック1種)の毛白生地5種(毛モスリン,毛サージ,毛綾薄手,毛フェルト,毛30アクリル70混紡)への再汚染性を,処理温度20~50℃の条件で検討した。汚染処理は,インキュベータBT-47(ヤマト科学製)内の所定の温度で,処理時間5分,振とう速度120rpmの条件で行なった。汚染前後の布の表面反射率を色差計ND-1001DP(日本電色工業製)を用いて表裏4箇所を測定し,汚染率を算出した。 【結果】石油ベンジンの固体微粒子分散液中での毛の汚染性について比較したところ,毛モスリンに対する汚染率は,いずれの固体微粒子汚れにおいても,処理温度の高いものほど大となる傾向が認められた。また,毛モスリンに対する汚染率は,いずれの処理温度においても,酸化鉄(_III_)<α酸化鉄(_III_)<四三酸化鉄の順に大きくなる傾向が認められた。カーボンブラック汚れの場合においては,いずれの処理温度においても,毛フェルト>毛・アクリル混紡>毛モスリンの順に小となる傾向が認められた。
  • 森田  さほ里, 多賀谷 久子
    セッションID: P-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】【衣類のドライクリーニング溶剤の環境への影響や洗い上がり品質の問題などで、ドライマーク付き衣類に対する湿式洗濯の導入が進められている。本研究では、溶剤による環境負荷低減のための衣類の水系超音波洗浄システムの構築を目的として、複合汚れのうちの粒子汚れ除去におよぼす音圧と界面活性剤の界面化学的作用について検討した。 【方法】汚染布はドイツ製のwfk 60D (羊毛)、30D (ポリエステル)、10D (綿)および日本製の湿式人工汚染布(JPC, 綿)を用いた。洗浄液は純水あるいはこれに界面活性剤を加えたものである。 洗浄液の温度を30℃とし、 試作布用超音波洗浄装置(発振周波数29.25kHz、300W)を用いて、3分間洗浄した。洗浄前・後の試験布の表面反射率を測定し、クベルカムンク式から洗浄効率を求めた。 【結果】洗浄槽内の音波強度 (dB) を測定し、音圧(mN/cm2) と洗浄効率の関係を調べた。粒子よごれの洗浄効率は音圧と一次の比例関係にあることが見出された。直線の勾配と洗浄開始音圧は、基質、汚垢成分、洗浄液などで変化した。60Dや30Dの純水洗浄では、10Dに比し、高い音圧を要する。界面活性剤を加えた場合、洗浄効率は音圧に依存するが、その勾配は小さく、低い音圧で高い洗浄効果が得られた。60Dでは、低い音圧でラウリル硫酸ナトリウム (SDS) の界面化学的作用による粒子汚れ除去の割合が大きく、音圧が増すとその割合が減少した。ポリオキシエチレンアルキルエーテル (C12E8)では、SDSに比べて界面化学的作用の割合が小さく、音圧依存性を示さなかった。これは、アニオン性のSDSと非イオン性のC12E8の粒子汚れに対する界面化学的挙動が異なるためと考えられる。
  • ベントナイトについて
    井上 美紀, 鈴木 則子
    セッションID: P-31
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】市販粉末洗剤には、界面活性剤と洗浄効果を高めるためのアルカリ剤や分散剤、酵素等の他に、柔軟剤(ベントナイト)が配合されている場合がある。本研究では、ベントナイトによる被洗物への柔軟効果と洗浄力への影響について検討することを目的とした。
    【方法】ベントナイト (AまたはBの2種)を用い、添加量を変えた溶液中で綿布をターゴトメーターを用いて撹拌後、剛軟性測定や吸水性測定を行い被洗物への影響について比較した。また、洗浄実験は、洗剤 (JIS指標洗剤またはポリオキシエチレンアルキルエーテル)にベントナイトを加え(洗剤重量の0~20%)、湿式人工汚染布(洗濯科学協会製)をターゴトメーターで洗浄し、表面反射率から洗浄効率を求めて比較した。また、市販の柔軟剤配合洗剤の洗浄力も比較検討した。
    【結果】剛軟性測定(ハートループ法)結果より、ベントナイトで撹拌処理した試料布の剛軟度は、AとB共に、ベントナイト濃度が高いほど原布より高い値を示した。特に、洗剤重量の10%以上ベントナイトを添加した場合、剛軟度が高く柔軟効果が見られた。吸水性測定結果より、原布の吸水性に比べると、ベントナイトで処理した試料布の吸水性との差は小さかった。
    また、JIS指標洗剤での洗浄実験結果は、ベントナイトを添加しない場合に比べると、添加した場合の洗浄効率は、同程度かわずかに低い値を示した。一方、ポリオキシエチレンアルキルエーテルでの洗浄実験結果は、洗剤重量に対してベントナイトAでは12%、ベントナイトBでは15%以上添加した時の洗浄効率が約12~16%低下した。さらに、市販の柔軟剤配合洗剤の洗浄効率は高く、未配合洗剤と同程度であった。
  • 脇田 淑子, 片渕 奈美香, 谷田貝 麻美子
    セッションID: P-32
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    《目的》 型友禅は、明治初期にわが国に合成染料が導入されたことを契機としてその技法が確立されたもので、独自の美的価値を有する近代染織品といえる。ここでは、明治・大正の型友禅の適切な保存管理のための基礎的研究として、そこに用いられた合成染料の部属を明らかにするとともに、保存管理に関わる重要な特性としてその染色堅牢性について検討した。
    《方法》 試料には、明治・大正の型友禅の特徴を備えた市販の縮緬古裂を用いた。色調の異なる部分ごとに試験片(約10mg)を採取し、JIS L1065:1999「染色物の染料部属判定」に準ずる方法で、各種溶媒による試験片からの染料の抽出の有無、ならびに抽出液による各種繊維の染色性の有無や、液性等による抽出液の脱色・復色の様子にもとづき染料部属を鑑別した。さらに、水系・非水系洗浄処理や各種光源による露光に対する染色堅牢性を調べた。
    《結果》 染料部属鑑別の結果、赤系の部分には酸性染料が多く見出されたが、どの溶媒でも抽出されたため部属の判定に至らないものもあった。紫系および青系の部分には、耐光堅牢性の低さから現在ではほとんど用いられない塩基性染料が多く見出された。地の部分には酸性染料も見出された。これらの試料の中には、水系洗浄処理によって色おちや色なきが生じるなど、著しく染色堅牢性の劣るものがあることがわかった。このことから、初期合成染料の用いられた染織品の取り扱いには、十分な配慮が必要と思われる。
  • 下村 久美子, 金井 千絵, 渡邊 博子
    セッションID: P-33
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 古来から染色に用いられている藍は、現代でも工芸品やジーンズの染色に用いられ、染色には欠かせない染料として用いられている。そのほとんどは合成藍であるが、天然藍を用いた付加価値のある製品も市販されている。本研究では天然藍と合成藍の色相の相違を明らかにすることを目的として、天然藍と合成藍を用いて染色を行ない、これらの布の色相と染色堅ろう性を調べた。
    方法 藍の染色は、琉球藍、すくも藍、合成藍、市販のインド藍の4種類を使用した。染色に用いた繊維は綿ブロード、麻、絹の3種類である。これらを藍の染色液に30秒浸した後、空気発色3分を1回の染色操作として、1回~15回の重ね染めを行なった。また、これらの染色布について洗濯、耐光、摩擦堅ろう度試験を行なった。
    結果 4種類の藍染めを行ない、これらの染色布の反射率曲線からK/S値を求め、さらにLab値を求めた、その結果、色相は重ね染め回数が多いほど濃色に染色され、色調では濃度差はあるがほぼ同様であった。繊維の種類別では、今回の実験で用いた繊維の中では麻が最も染色斑がなく均一に染色できた。これは色素が付着するための間隙が広いことが影響すると考えられる。4種類共に洗濯堅ろう度の結果は4-5級、摩擦堅ろう度試験の結果は1-3級、耐光堅ろう度試験の結果は3-5級であった。これらのことから天然藍と合成藍の顕著な差は確認出来なかった。しかし、琉球藍と合成藍では添布白布に赤色の色素が付着したことから、赤色色素が染料中に含有されていることが示唆された。また、耐光堅ろう度試験は72時間の照射時間であったが、染色回数が多いと変退色は認められないが、特にインド藍の染色回数1回の絹の場合は、明らかに白黄色に変色することが確認できた。
  • 阿部 祐子, 片山 倫子
    セッションID: P-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    【目的】染色廃水処理に酵素を利用する方法を検討してきたところ、ビリルビンオキシダーゼが銅フタロシアニン系、アントラキノン系、アゾ系、銅フォルマザン系、ジスアゾ系染料の脱色に有効であることを明らかにしたが、本報では比較的廉価な酵素であり、トリアリルメタン系、インジゴイドアゾ系、アントラキノン系染料に対して優れた分解能を有することが報告されているラッカーゼを用いて、銅フォルマザン系及びジスアゾ系染料に対する脱色性能を調べることを目的とした。 【方法】銅フォルマザン系染料(B220)及びジスアゾ系染料(R299)の水溶液にラッカーゼ(Lac)を添加し、添加後の紫外及び可視部吸収スペクトル変化を調べ極大吸収波長における吸光度変化から各染料の脱色率を求めた。 【結果】B220はpH未調整 (pH5.8±0.2) ではLac添加後少しずつ青色が薄くなり24時間後には薄い黄色の水溶液へと変化していったが、pH4の溶液ではLac添加直後から緑色に変化し1時間後には薄い黄色の水溶液になり、96%以上の高い脱色率を得た。一方R299は、Lac添加後、時間が経過するにつれ徐々に赤色が薄くなり、75%以上の脱色率を得た。紫外部(350~400nm)に一度新しい吸収帯が見られたがその後吸収帯は消失した。B220及びR299ともに実験を行った範囲では、pH4、反応温度60℃において最も高い脱色率を示したので、実際に廃水処理に応用するためにはラッカーゼの至適条件(pH4~4.5、温度60℃)に調整することが望ましいが、エネルギー効率などを考えるとpH4に調整すれば、常温でも十分に脱色することがわかった。
  • 小林 優子, 鈴木 恒夫
    セッションID: P-35
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的:一般的に植物による染色布は合成染料に比べ退色が著しく、特に媒染金属を使用する場合、媒染金属の繊維からの脱離が退色を促している。そこで金属を捕捉する働きが大きいキレート剤で布を処理し、その後洗濯実験を試み媒染金属の繊維上での安定化について検討した。キレート剤は、市販合成洗剤に金属封鎖ビルダーとして配合されている物質であるが、染色工程で処理をすることで染色布の堅牢度向上の可能性を意図した。植物色素として、ケルセチン色素を使用し実験をした。
    実験方法:絹布を使い、特級ケルセチンにて染色した。媒染金属として酢酸銅を用い、キレート剤はNTA、IDAを使用した。洗濯実験には、市販合成洗剤、市販中性洗剤、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を用いて行い、染色布の色相を分光光度計で測色した。濃度は、ケルセチン:4×10-4mol/l、Cu2+:4×10-5mol/l、キレート剤:4×10-5mol/lとした。染色工程は、媒染金属(M)-染色(D)-キレート剤処理(C)を1、(M)-(C)-(D)を2、(C)-(M)-(D)を3とし、工程による違いを比較した。
    実験結果:NTA、IDAで処理することにより、未処理の絹布より濃色に染まった。染色後、市販合成洗剤を用いた洗濯では、キレート剤処理の影響で酸化が促進され、退色が見られた。しかし洗濯後の色差(ΔE*)は、NTA-1・2以外は、未処理の染色布より高い値を示した。NTA-3では、洗濯後の色差(ΔE*)が増加し、色度はa*値のみが増えた。キレート剤の種類および染色工程により、Cu2+とキレート剤の結合が異なり、色素の吸着量にも影響を与え、染色布の色相に違いが現われたと考える。
  • 庄山 茂子, 伊佐  美穂子, 岩瀬 絵梨子    
    セッションID: P-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 我が国においては、人口の高齢化が進み高齢者に対する支援が求められている。特に高齢者の体型は、加齢により変化するため被服デザインの役割は重要となる。そこで、本研究は、高齢女性が着装するスーツの格子柄に着目し、格子柄の大きさが視覚的評価に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。
    方法 (1)調査概要 1)試料:格子柄の大きさ(1cm、2cm、3cm、4cm、7cm、無地)の異なるdeep-Redおよびdeep-Blueのスーツを着装した高齢女性の写真 2)調査場所:長崎県 3)調査対象者:女子学生18~22歳77名、3)調査方法:質問紙調査 配票留置法、4)調査時期:2005年10月~11月、(2)調査内容:好感のもてる格子柄の大きさ、すべての格子柄について22対の形容詞対を用い、SD法による5段階尺度でイメージ評価 (3)分析方法:単純集計、平均値の差の検定(t検定) 、主因子法による因子分析一元配置の分散分析
    結果 高齢女性が着装するスーツについて、女子学生は、deep-Redおよびdeep-Blueともに1cmの小さな格子柄や無地に好感を持った。1cm、2cmの格子柄は、嗜好性、平凡さ、スタイルの平均因子得点が高く、4cm、7cmの格子柄は積極性の平均因子得点が高かった。女子学生は、平凡でスタイルのいい格子柄のスーツに好感を持った。また、背の高さと太さは、色相間よりも格子柄の大きさの違いによる影響が大きいことが明らかとなった。
  • 平林 由果, 渡辺 澄子
    セッションID: P-37
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目 的】ファッションはその人のライフスタイルを反映し、個性を表現する。おしゃれをすることは、着る人の高揚感を高め、ストレスを軽減させ、免疫力を亢進させるのではないかと考えられる。そこで、気に入った服装とそうでない服装をした時にストレス負荷を行い、おしゃれの心理的効果とストレスホルモンへの影響を検討した。 【方 法】ストレスの指標として、唾液中のアミラーゼ、コルチゾール、分泌型IgAを測定した。並行して服装時に生起する多面的感情状態尺度を肯定的・否定的な35項目について尋ねた。実験は女子大学生9名を被験者とし、5分間のクレペリン検査実施後、唾液を採取し、学内の人通りの多いロビーを通って売店で買い物をするというプロトコールで行った。服装条件(条件1: 気に入った服・化粧あり、条件2: Tシャツと短パン・化粧なし)を替えて同実験を実施し、その結果を比較した。 【結果および考察】感情状態尺度において、実験後に条件1では肯定的感情状態の値が高くなり、条件2では否定的感情状態の値が高くなった。唾液中のアミラーゼ分泌量、IgA分泌量においては、服装条件の違いによる一定の傾向は認められなかった。コルチゾールの分泌量は9例中7例において、条件1の方が条件2よりも実験後の減少が大きく、有意差(P<0.05)が認められた。コルチゾール分泌量はストレス負荷により増加することが明らかにされている。この実験では、クレペリン検査によるストレスを買い物をすることで解消したが、気に入った服装時(条件1)の方がその効果が大きかったと推測される。これらの結果は、おしゃれを楽しむことがストレスを緩和し、心も体も元気にする可能性を示唆していると考えられる。
  • 花田 美和子, 井澤 尚子, 佐々木 由美子, 吉田 千恵子, 小吹 史子, 盛田 真千子, 芦澤 昌子, 石原 久代, 橋本 令子, 斎藤 ...
    セッションID: P-38
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 明るさを表す日本語は数多く存在する。例えば、日の出を表す言葉には、あかつき、あけぼの等、日の入には、夕暮れ、黄昏等、日本人が明るさの刻々と変わる瞬間を大切に感じてきた歴史が見られる。しかし現代においては、照明の発達や深夜営業の増加等により微妙な明るさの変化を捉える機会が減っており、それらを表す言葉の使用も減少してきている*。そこで本研究では、それらの言葉に相当する照度を測定することにより、現代人が言葉からイメージする明るさを数値化する試みを行なった。
    方法 被験者は30歳代から60歳代までの男女9名とし、日の出・日の入をあらわす用語12語を“明るさの言葉”として用いた。日の出・日の入の時間帯に屋外にて明るさを体感し、各“明るさの言葉”から被験者がイメージする明るさに達した時点の照度を測定した。次に、同様の実験を人工光を用いておこなった。被験者は10歳代から60歳代までの女性10名とした。実験はナショナルセンター東京内の照明ラボで行い、照度は0.1lx から1000lxまでの11段階、照明の色温度は3000Kおよび5000Kとした。被験者は実験室で10分間暗順応した後、日の出を想定して段階的に照度を上げていく中、各照度レベルに相当する“明るさの言葉”を調査用紙から選択し、記入した。また、日の入を想定し、照度を下げていく実験も同様に行った。
    結果 自然光と比較して、人工光の空間では同じ“明るさの言葉”でも全体的に低めの照度を申告する傾向がみられ、日の出の際の太陽光が認識以上に高照度であること、日の入の際の屋外の空間が、街灯等によりイメージよりも高照度であることが示唆された。
    *日本家政学会第58回大会要旨集pp.187
  • 佐藤 了子, 佐藤 恵
    セッションID: P-39
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 通学時及び学内で制服着用を義務付けられていた女子短大生が、制服の廃止により旧制服に持つイメージをどのように捉えていたかを中心に、ファッションスタイルの嗜好、およびファッションスタイルの受容についても明らかにすることを目的とした。
    方法 質問紙法によるアンケート調査。調査対象者は女子短期大学生1年生99名。有効回答数は96であった。調査期間は平成15年11月。調査内容は出身高校、旧制服の所有状況、旧制服に持つイメージ(SD法、5段階評価)、ファッションスタイルの嗜好(20項、5段階評価)、及び着装の受容(20項、4段階評価)についてである。
    結果 旧制服の着用状況は、着用しないが52%、いつも着用する17%、着用することが多い21%、時々着用する10%であった。着用する理由として私服を選ぶ面倒がないから61%が最も多く、毎日の通学に私服を選ぶ必要がないという理由から旧制服を着用しているようであった。旧制服に持つイメージで平均点の高かった項目は、清潔な、清純な、上品な、知的なイメージであり、低かった項目は、個性的な、派手な、活発な、人目を引くなどの項目であった。ファッションスタイルで好まれているものは、気軽で自由なスタイル、シンプルなスタイル、若々しいスタイルで、好まれないものは、ロマンティックなスタイル、アダルトなスタイルであった。着装の受容については、抵抗感が少ないものは、ミニスカート、パンツとスカートの重ね着、破れたジーパンなどであり、抵抗感のあるものはへそ出しルック、シースルーの服、胸の大きくい開いた服を着るなどであった。現在流行の着装は受容されているが、体がでる着装には抵抗感があることが示唆された。
  • 山口 亜由, 深沢 太香子
    セッションID: P-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] カンガとは,ケニアやタンザニアを中心とした東アフリカの民族服である.大きさが経 110 cm × 緯 165 cmの1枚の薄布で,体に巻きつけて着用する.ケニアでは今もなお民族服であるカンガを日常服として広く用いている.その理由を文化的・生理的二つの側面から検討する.
    [結果]
    ‐文化的側面から‐
    色彩豊かなカンガは,ヨーロッパ植民地支配下のもと奴隷制度廃止により約150年前に登場した.調査により,カンガの原型となったのは奴隷用の黒/紺の単色で染色された服,カニキであることが明らかとなった.人々は,カンガのデザインの一部であるジナという文章部分を通じて,ことわざ・人生教訓を学ぶ.そして,言葉で表現できない感情を伝える道具としても用いている.また,人々に啓蒙する道具としても有効な媒体であり,生活の質に対する意識を高めることに重要な役割を果たしている.以上より,カンガはメッセージを表現するツールとして非常に有効な手段であるため,今もなお,広く使われているものと考えられる.
    ‐生理的側面から‐
    Mecheelの推定式を用い,カンガの環境適応域を検討した.その結果,17.5 ~25 ℃ の広い環境適応域を示した.これより,内陸部であるナイロビには1年を通して,海岸地域のモンバサには6 ~ 9 月の気候に適応していることが明らかとなった.カンガは軽量であるものの,薄布を身体に巻きつけることにより,衣服下空気層を保持する為,幅広い適応域を示したものと考えられる.また,着装条件を自由に変化できるため,適応域をさらに広くすることもできる.よって,温熱的快適感を得るのに調節しやすい衣服であるため,人々に広く用いられていると考えられる.
  • 益本 仁雄, 坂下 春奈, 栗原 未来, 宇都宮 由佳, 滝山 桂子, サッカヤパン サオワパー
    セッションID: P-41
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的・方法:近年,日本では和ブームがみられ着物など伝統服やその柄,デザインに関心が高まっている.またタイでは,OTOP(タイの一村一品運動)による地場産業の復活運動や学校での毎週金曜日に伝統服を着用するなど伝統文化が見直されている.
    本研究では,幼い頃から洋服を着用している現代の若者が自国の伝統服に対して,どのようなイメージを持っているのか,またどのようなライフスタイルをおくっている者が伝統をよく着用しているのかについて,日本とタイの女子大学生(18~24歳)を対象に2007年7,8月記述式質問紙調査を実施し,聞取り調査をあわせて明らかにした.
    結果・考察:両国ともに伝統服に対して,「動きにくい」「着用が難しい」など機能性に欠けると思いつつ,「目立つ」「かわいい」「華やか」と好意的印象を持っている.伝統服着用は,「伝統行事への参加」と関連性が高く,日本ではファッションに関心があり,伝統行事へよく参加する人が着用している.一方タイは,伝統行事に関心が深いものの,日本ほど着用と行事参加に関係性がみられない.着用頻度の高い人物は,日本では「海山へ行く」「旅行好き」などアクティブな面が見られる.一方,タイでは「読書好き」や「規則正しい生活」「親の手伝い」をする者であった.自国の伝統を意識する対象として,「伝統服」と「伝統菓子」で比較した結果,身近であるのは両国ともに「伝統菓子」であったが,外国人に紹介するならば,タイは「両方」が半数,日本は「伝統服」が6割以上と高かった.現代の若者は,両国ともに自国の伝統文化に誇りがあり,継承したいと考えている.ただ,そのための知識と手段を持ち合わせていないということが明らかとなった.
  • ウエディングドレス、アクセサリーなどの創作を中心に
    水谷 由美子, 神 大樹, 片山 涼子
    セッションID: P-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    現代のファッションデザインにおける光の表現に関して、まず新素材開発がある。同時に、布の表面装飾として従来のスパンコールやビーズに代わって、発光ダイオードLEDの使用例が近年見られる。LEDは熱を発しないこと、コンピュータ制御によって自在に色彩が調整されること、動きを与えて変幻自在な模様を表すこと等が可能である。  今回の創作研究において、我々は装飾効果で光を利用したファッションデザインとして、ウェディングドレス、その他2着のドレスとアクセサリーを制作した。ウェディングドレスは発光ダイオードで模様を付けたビスチェが特徴である。これは、新しい結婚式空間の演出の可能性を感じさせるものである。 また、光を直接見せるタイプと間接的に見せるタイプの2着の金と銀のペアードレスは、ウエディングドレスとともに顔を白く見せたいという願望に答える機能をもデザイン要素に入れている。さらに、ネックレスとして作成した作品の形状は民族的なモチーフを参考に、白色と青色の発光ダイオードを組み合わせている。これらの発光ダイオードファッションは、近未来のライフスタイルやライフステージの演出道具としても機能することを目指している。しかし、今回のデザインについてはあくまでも生活の場面と溶け合う範囲の表現を目指しており、娯楽的な道具に陥らないように工夫をした。  ここで発表する発光ダイオードファッションの創作は、山口大学工学部の田口常正教授との共同研究によるもので、発光ダイオードの制作は小橋克哉技官が担当したものである。  今後、商品開発に向けてより具体的な可能性を産学にて模索すべく計画中である。
  • 加來 卯子, 池田 美智代, 八尋 俊子
    セッションID: P-43
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 被服教育のあり方についての方向性を見出す参考にするために、被服専攻生を対象に被服教育に対する一連の意識調査を行った結果、卒業後の進路にアパレル関連企業を志望する学生に対して、実践力を養うカリキュラムの必要性が感じられた。検討の結果設置されたのが、インターンシップを導入した「ファッションビジネス論・同演習」である。
    方法 インターンシップの内容は、期間限定(2月末から3月初旬の6日間)のセレクトショップを市内の百貨店に出店する。ショップ名・ショップコンセプト・商品の仕入れ・店内のレイアウト・DM葉書やポスター・目標売上額・販売商品によるファッションショー・売り上げ台帳の整理等々、指導を受けながらも全て学生の手で進められる。
    結果 履修生にとって最も大きい収穫は、半年間の講義の内容を統合させながら実務を経験することで、物事をやり遂げる満足感・充実感を味わうことができた点にある。準備の過程における仲間同士の意見のぶつかり合いを乗り越えての協力の素晴らしさを認識できたことは、その後の社会生活に大きく寄与すると思われる。  卒業後の進路に対する指針・適性の判断を得ることができ、その後の人生を決定するほどの場合も見られた。また、履修経験で培われた自信は、各分野の就職試験の面接でかなり高く評価されている。  講師と出店の場所を提供してくれた企業にとっては、若者の感性や好みを知る好機となり、学生が授業の一環として行う市場調査等は企業の情報源として活用できるし、学生を通して顧客の獲得につなげることができると考えられる。
  • 宇都宮 由佳
    セッションID: P-101
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的:タイの伝統菓子は,カノムタイと呼ばれ,カノムの由来が米(カーオ)であることから,米が主体であることがわかる.米を主食とする東アジアにおいて,各地域の伝統菓子は類似したものが多い.また16世紀後半,ポルトガル菓子の影響を受け,調理器具にオーブンが用いられ,初めて菓子に「卵」が使われるようになった点でも共通性がみられる.大航海時代にポルトガルが進出した地域は,日本,タイ,マカオやマレーシアなど東アジアの各地に点在している.これらの地域で,当時のポルトガル人が自国から持参した,あるいは現地で調達した調理道具,食材を検討すると,各地域に伝えられ受入れられた菓子には共通するものが多かったのではないだろうか. 東アジアという文化的に相互に関連がある広い領域において,どのようなポルトガル菓子が各国へ伝来し,そして発展または消失していったのか?
    本研究では,上記の疑問解明の第1ステップとして,地域をタイに限定し,ポルトガル由来の菓子を探る.
    結果:タイの伝統菓子についての代表的な文献S. Khounphan著「KANOM THAI 1~2」を用いて,材料及び調理法から各種の菓子をデータ化し,タイ伝統菓子の全体を把握した.タイの伝統菓子は,鶏卵だけなく,アヒルの卵を用いることも多い.そこで,「卵」を中心にポルトガル由来の菓子を浮き彫りした.タイでは,ポルトガル菓子のFios de ovosと同じ伝統菓子フォイトーンが認められ,またこれから派生したと考えられるトーイップ,トンヨーは,ほぼ同じ材料で作られるが,形状は異なっていた.これらはポルトガルでは見られず,伝播した菓子がタイで発展,変容したことが伺えた.
  • -隠れ家に持ち込まれた食品と当時アムステルダムの商品流通-
    小竹 佐知子
    セッションID: P-102
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 『アンネの日記』に書かれている食品を調査して、隠れ家に運び込まれた食品の種類を分析し、隠れ家内での食糧事情の変遷の様子を検討した。 方法 『アンネの日記 完全版』文春文庫、アンネ・フランク著、深町眞理子訳、文藝春秋社(1994)を調査対象資料として全食品を抜粋し、761日間の隠れ家生活のどの段階でどのような食品が運び込まれていたかを調べた。 結果 『アンネの日記 完全版』に記載された食品の種類と記載割合を調査した結果、総記載食品数は332品であった。これらの食品を食品群に分けた結果、記載割合の多かったのは穀類、イモ類、野菜類であり、いずれもそれぞれ11.7%を締めていた。イモ類は全てジャガイモであり、他の種類のイモは見られなかった。この3群の食品は、いずれも多量に摂取したい食品であったが、一方、隠れ家生活の期間(1942年~1944年)のこれら3群の消費者物価指数はいずれも上昇しており、品質劣化や不足の様子を頻繁に書くことが記載割合を多くしていた要因と考えられる。肉類、乳類の1942年から1944年までの消費者物価指数は変動がなく、品質劣化や不足の記述はイモ類、野菜類に比べると少なかった。主要栄養への寄与が少ないし好品である菓子類、し好飲料の割合がいずれも9%以上を占めていたが、誕生日プレゼントとして、支援者から贈られるケースが多かった。
  • 大久保 恵子, 小竹 佐知子
    セッションID: P-103
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    目的 頼山陽の母・梅颸(ばいし1760~1843)が26歳から48年間書き続けた『梅颸日記』により、家祭行事に関連する食品について検討した。 方法 家祭行事の日記記事を抜粋し、食品の種類、利用状況、入手法を調査した。 結果 当時頼(らい)家では、毎月の朔望 (21回)、季節ごとの佳節の祭(6回)、先祖忌祭(8~11回)、丁祭・時祭(それぞれ2回の計4回)が行われ、家祭行事は全部で年間39~42回にも上った。平均するとひと月に3~4回になる。これら祭の日記記載状況とそれに用いられた食品の記載状況は祭によってかなりの違いがあった。朔望の祭では当該月日の64%に記事が、また36%に食品の記載が見られ、佳節の祭では67%に記事、40%に食品が記されていたが、忌祭ではそれぞれ74%と5%、丁・時祭では37%と6%であった。すなわち、忌祭と丁・時祭での食品記載率が極端に低かった。忌祭と丁・時祭の献立資料が頼家に現存することから、日記には詳細を記載する必要が無かったためと考察した。使用食品は貰い物である場合が多く、送り主は家長である春水(梅颸の夫)の兄弟を初めとする親戚の外、友人知人、門人、また出入りの者からの各地の産物がみられた。晩年京都に住んでいた山陽からは虎屋の饅頭や「小倉野」という菓子が頻繁に送られていた。
  • 河野 篤子
    セッションID: P-104
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】滋賀県彦根市は歴史的、風土的に恵まれ、食材が豊富で、地域の名前がついた特産物が多数あったが、現在まで伝承されているものは少ない。現在栽培されていないが、特産物の一つであった「彦根りんご」は、中国より日本各地に伝来したといわれるワリンゴの一種である。彦根藩井伊家の古文書などにもみられ、彦根藩との関わりが深かったことが窺える。そこで、「彦根りんご」に焦点をあて、地域おこしのモデルとして展開することを地域の人とともに試みた。【方法】ワリンゴ、「彦根りんご」に関する文献調査により現在までの状況を把握するとともに、各地に残存するワリンゴおよび野生種の品種を調査し、利用可能な品種を選抜して栽培し、将来の利用方法を検討する。【結果】ワリンゴは『和(倭)名類聚抄』に記載があることから平安時代には既に伝来し、『享保・元文諸国産物帳』によると江戸時代には日本各地で栽培されており、彦根でのりんご栽培は『彦根藩井伊家文書』、『八木原太郎右衛門文書』などにみられるように、江戸中期よりおこなわれていた。しかし、『彦根の植物』によると、交通の発達や西洋りんごの導入などにより昭和30年代に栽培は途絶えている。新たに「平成の彦根りんご」再現のため、市民グループ「彦根りんごを復活する会」が立ち上がった。会では過去の資料をもとに、石川、長野および岩手の農業研究施設の協力を得て、数種のワリンゴや野生種を含む50種を選抜し、平成15年より米原市堂谷にある米原ワリンゴ園で栽培中である。現在、彦根市内の彦根りんご園や芹川の公園への移植し、市民への啓発をおこなっている。また、特産品として 菓子、シードルなどへの商品化も検討している。
  • 川村 昭子
    セッションID: P-105
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    [目的] 前報1)で、「短大生における年中行事の意識」について調査の一部を報告したが、引き続き年中行事がどのように意識されているかを知るために、その後の入学生にも同様のアンケート調査を行い、前報および6年間を比較検討した。なお、人の一生に関わる人生儀礼についても調査を行ったが、今回は検討しなかった。
    [方法] 前報(2001~2004年)と同様、2005~2006年度本学入学生を対象として自己記入法により実施し、即時回収した。質問は自由回答あるいは選択回答の形式をとり、これらの結果を集計し、検討した。
    [結果] 前報(2001~2004年)は316名、2005~2006年は193名の計509名で、自宅通学生は60.5%、下宿学生は39.5%、ほとんどが北陸三県(石川・富山・福井)出身者である。月別にどのような行事を行っているかを記述させると今回は24行事と6行事も少なく、数値も低かった。18行事の認識や実施の有無については、わずかながら少ない傾向であったが、平均すると認識は1人当たり12行事(12.0、11.7)、実施しているのは6行事(6.6、6.2)とあまり変わらなかった。2005年の調査では、認識・実施ともに数値が低く、1~2行事しか行っていないとした学生が12.7%と増えていた。正月、大晦日はほとんどの学生が知っていて、行っていたが、節分、雛祭りは知っていても、55~60%しか行っていなかった。他の行事も知っていても行わない、行わないが関わる食べ物だけを食すという回答が前報同様に多くあり、年齢とともに行う行事や行わない行事がみられた。
    [文献] 1) 川村;(社) 日本家政学会第57回大会研究発表要旨集、p.53(2005)
  • 内田 初代, 小田 良子, 都築 政秀
    セッションID: P-106
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的現在の食生活は物質的豊かさと引き換えに、伝統的な食生活の中で見られた様々な食機能が希薄化している感が強い。そこで、本研究では食生活への関心度及び家庭での行事食との位置づけを調べ豊かな食生活を営むためのあり方を検討する事を目的にする。
    方法本学女子学生に食生活状況と年中行事の食べ物についてアンケート調査を行った。調査項目は、これまでの報告されている先行研究を参考にして実施した。調査時期:2004年5月 調査対象:食物栄養学科1年79名;2年62名
    結果本年度は食生活への関心度について報告する。1)食生活への関心度についての回答は次の通りである。問1の主食である穀物摂取は、1,2年生共67%以上が3食共どれかを食べていた。問2からの主菜及び副菜では時々食べると回答する率が高かった。加工食品やジュース等ファーストフードは殆ど食べないと答えた。2)食事の質については、1,2年生共中程度と答えた。夕食の共食頻度は、殆ど毎日が30%で食卓の雰囲気は安らぎの場として答えた。朝食の欠食率も比較的低く夕食の共食頻度、食卓の雰囲気も安らぎの場で食事が心の充足感や和やかな人間関係を創る役割を果たしている場であった。  
  • 森政 淳子
    セッションID: P-107
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/26
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    目的 栄養科学生には、食文化の継承者として行事食・郷土食に関する知識・実践力が必要とされるが、その経験の機会は減っている。栄養科学生の行事食・郷土食に関する知識・学習の意欲・喫食および調理の経験とその学習の成果を、量的・質的に検討し栄養科学生の学習の課題を明らかにする。 方法 1.対象 短期大学1・2年生 121名  学部3年生 99名 2.方法 自記式調査票調査および聞き書き調査 3.時期 2005年11月~2006年8月 結果 1.栄養科の学生は、行事食に関するイメージは肯定的で、専門家として行事食を学ぶ必要があると考えている。 2.学生の行事食体験の場は、家庭や親戚の家などのほかに学校給食をあげるものが多い。 3.体験しているものほど、調理技術を持つものが多かった。 4.聞き書き調査の結果から、調査自体が学生に行事食への興味を高め、自主的に体験をするなどの意欲を示すものの存在が示された。 考察 栄養科の学生には、栄養士として自身の将来像を明確に持つものが多く、そのために学習に対しても意欲的に取り組むものが多い。授業等で給食が伝統食の継承の場であること、自身が習得している知識・技術の程度などを具体的に確認することにより、動機付けは高められる可能性が示されている。その上に技術獲得の機会を提供することにより、効果は高められると考えられる。
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