一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
59回大会(2007年)
セッションID: B1-1
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画像解析による天然染料と合成染料で染めた染色布の色彩分析
*森 俊夫淺海 真弓小見山 二郎
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抄録

目的 天然染料による染色方法は極めて複雑であり,色の再現性の難しさや染色堅牢度などの点で大きな問題もあるが,深みや渋みのある色など自然感のある色合いを出すことができる.合成染料とは異なる天然染料特有の染色性の評価は定性的,視覚的判断でしか行われておらず,微妙で複雑な色調を有する天然染料による染色物を色彩科学的に解明することは困難であった.本研究では,画像解析を適用することにより天然染料と合成染料で染めた布の色彩分析を行い,明度,彩度,色相の視点から両者の違いについて検討する.
方法 試料として,各種天然染料および各種合成染料で染めた綿,絹および羊毛の染色布を選び,カラースキャナからこれらの画像を取り込んだ.画像解像度は200dpiで,各画像における色彩情報を約0.1mm間隔で求めた.取り込んだ各RGB画像を明度(L*),彩度(C*)および色相(H*)画像に変換し,L*およびC*画像から各画素のL*値およびC*値を算出し,H*画像からは赤を基準(0°)とした色相角H*を色彩情報量として求めた.
結果 横軸に水平(垂直)方向の画素位置をとり,縦軸に垂直(水平)方向のL*値の合計値SV- L*(SH- L*)をプロットし,天然染料と合成染料による染色物の変動曲線を比較した.綿の染色布では,SV- L*(SH- L*)は水平(垂直)方向の場所により大きく変動し,天然染料は合成染料による染色物に比べて変動が大きいことが分かった.同様に,C*およびH*画像についてもの変動曲線を求めた.各変動曲線から,各色彩情報量の平均値,標準偏差並びに変動率(CV)を算出した.羊毛の染色布ではC*画像,絹の染色布ではH*画像で,天然染料と合成染料の染色物の変動率に違いが見出された.

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© 2007 一般社団法人 日本家政学会
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