一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
61回大会(2009年)
セッションID: 2P-32
会議情報

調理が子どもの精神的発達に果たす役割
児童の意識と行動を構造的に分析する試み
*高橋 洋子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

目的: 調理が子どもの精神的発達に果たす役割を実証的に検討することを目的として、アンケート調査を企画した。本報では、予備調査をもとに、児童の意識と行動の因果関係を、共分散構造分析を導入して分析した事例を報告する。
方法: 2008年6月、新潟市内の小学校4・5・6年生とその保護者を対象にアンケート調査を行い、男児67名と女児71名の意識と行動を分析した。アンケートから観測された変数「調理する人への憧憬」「調理上達の願望」「現在の調理意欲」「調理上達の自信」に影響を及ぼす潜在変数として“調理意識”を、「現在の調理頻度」「現在の調理技能」に影響を及ぼす潜在変数として“調理行動”を設定し、“調理意識”が“調理行動” に及ぼす影響を示すものとした。さらに「幼少期からの調理経験」が“調理意識”“調理行動” に及ぼす影響と、“調理意識”“調理行動” が「社会性の発達」に及ぼす影響も加えて、一連の因果関係をモデル化し、男児・女児各々のデータで共分散構造分析を行った。
結果: (1)モデルの適合度: モデルのGFIは男児0.944、女児0.953で、いずれも適合度は良好であった。(2)変数の関連性に見られた性差: a.“調理意識”が“調理行動” に及ぼす影響は、男児の方が強かった。b.「幼少期からの調理経験」が“調理意識”“調理行動” に及ぼす影響は、いずれも女児の方が強かった。c. “調理行動” が「社会性の発達」に及ぼす影響は、男児の方が強かった。(3)まとめ: 「幼少期からの調理経験」が、現在の児童の“調理意識”と“調理行動”を通じて、「社会性の発達」で例示した精神的発達につながる一連の過程を、モデル化して説明できる可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top