抄録
【目的】 食品の嗜好価値は,味,形,色,香り,テクスチャーなどの化学的・物理的特性によって決定される。一方,現代社会においては,加工品の普及により,簡便性・合理性・利便性が重視され,食の色彩は軽視される傾向にある。食における色の効果を大事にしてきた我が国には,和菓子という伝統的な菓子がある。しかし,食生活の洋風化により,和菓子の喫食頻度は減少傾向にあり,食文化の継承という面において懸念すべき状況である。練りきりやきんとんに代表される茶席の和菓子においては,(1)色や形などが多様である,(2)カロリーが低い,(3)卵や小麦粉に起因する食物アレルギーの心配が少ないなどの利点をもつ。さらに,色の配色など色彩に関して繊細な心遣いがなされており,それが食べる人の食欲に大きな影響を及ぼしていると考えられる。練りきりの色彩と食嗜好性の関係を明らかにし,色の美しさと多様性が特徴的な練りきりを食育教材として活用することで,栄養面・食文化面など多角的視点からの食育の遂行が期待される。そこで本研究では,練りきりの色彩構成が小学生の食嗜好性に及ぼす影響について検討した。
【方法】 調査対象は,静岡大学教育学部附属静岡小学校の6年生児童(男子56名,女子52名),実施期間は2009年12月~1月である。異なる着色料で着色した練りきりを実際に見てもらい,食嗜好性を測定した。着色した練りきりの色は色彩色差計CR-400/410(コニカミノルタ センシング株式会社)で測定した。
【結果および考察】 女子は男子に比べて天然色素の色合いを好む傾向が見られた。また,女子は薄いトーン,男子は濃いトーンを好む傾向が見られた。男女間で,食嗜好性の高い色相・トーン・着色材料が異なることが明らかとなった。