目的 筆者は、東京女子高等師範学校卒業生と家政学専門職に関する研究の一環として、同校家事科の卒業生で、戦後小学校家庭科を中心とする教育課程行政に携わった鹿内瑞子氏の旧蔵資料を読み進めている。すでに、昭和20年代における小学校家庭科の存置運動と「小学校家庭生活指導の手びき」(昭和26年)等の刊行に携わった「小学校家庭委員会」における議論、昭和31年・33年の小学校学習指導要領改訂に関わる審議過程を検討した。本研究では引き続き昭和30年代前半の小学校家庭科に関する研究動向について検討する。
方法 国立教育政策研究所教育図書館所蔵「鹿内瑞子旧蔵資料」のうち、昭和33年「教材等調査研究会小学校家庭小委員会議事録」(資料No.131)、昭和35年「教材等調査研究会小学校家庭小委員会綴」(No.132)、実験学校の研究報告(No.787ほか)を資料とした。
結果 (1)昭和33年12月より開催された教材等調査研究会小学校家庭小委員会は15名の委員からなり、4ヶ月余の間に15回以上の委員会を開き、昭和33年改訂の趣旨を徹底させるための指導書の内容について検討している。(2)昭和35年7月より開催された教材等調査研究会小学校家庭小委員会は17名の委員からなり、10ヶ月余の間に30回以上の委員会を開き、小学校家庭科手引書「第5学年の家庭科の学習指導」作成のための検討を行っている。(3)昭和31年度、32年度に文部省実験学校として「家庭科」の研究指定を受けた小学校では、児童の家庭生活環境の調査のもとに、31年度改訂を受けた「家庭科学習内容の系列表」を作成するなど、小学校家庭科の教育課程編成のあり方に関する研究を行っている。