一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
64回大会(2012年)
セッションID: 3C-1
会議情報

口頭発表 5月13日 食物
ベイクドチーズケーキの濃厚でなめらかなテクスチャーに及ぼす卵黄の影響
水尾 和雅大上 安奈*杉山 寿美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】これまでに,卵黄に由来するLDL等は油水界面に吸着,再構成されて乳化作用を示すこと,界面に配列したLDLたんぱく質の加熱変性は油滴の凝集を促進させることが示唆されている。しかし,実際の調理加熱過程での報告はなく,脂肪を多く含む焼成菓子類に配合される卵黄の役割は明らかでない。そのため,ベークドチーズケーキを試料として卵黄の役割を明らかすることを目的とした。
【方法】配合はクリームチーズ80g,乳脂肪クリーム40g,全卵20g(卵黄7g,卵白13g),砂糖30g,コーンスターチ3g,レモン汁5gとし,全卵を卵黄(7g, 20g)あるいは卵白(13g, 20g)に置換したもの,卵を配合していないものも調製した。乳脂肪クリーム量を増減したものも調製した。チーズケーキの性状は静的粘弾性測定と官能評価によって,チーズケーキの構造は動的粘弾性測定(応力・周波数依存),冷却遠心分離による分画と脂質分析(脂肪量,PL-Pi量)から把握した。
【結果】少量の卵黄が含まれる場合,なめらかで,濃厚であり(官能評価),凝集性,付着性が高かった(静的粘弾性)。また,少量の卵黄が含まれる場合,卵を配合していない場合に,乳脂肪クリーム配合量が多くなるほどG’,G”の値が大きくなり,周波数依存性が小さくなり,ゲル的性質が強くなった(動的粘弾性)。冷却遠心分離による分画では,少量の卵黄が含まれる場合に,クリーム画分に含まれる脂肪量,PL-Pi量が少なく,遊離脂質画分,懸濁液画分,沈殿画分に多く分画された。これらから,少量の卵黄が含まれる配合では,乳脂肪球表面で再構成されたLDLたんぱく質の加熱変性により,乳脂肪球の凝集,合一,崩壊が生じ,ゲル的性質を与えるとともに,遊離した脂肪が濃厚で,なめらかなテクスチャーを付与していると考えられた。

著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top