一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
64回大会(2012年)
セッションID: 3I-9
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口頭発表 5月13日 住居、震災
居住者の住宅形態からみた歴史的居住地の持続性
―奈良県奈良市「奈良町北地区」における―
*牧野 唯今井 範子
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抄録

【目的】奈良町北地区は,江戸期から昭和初期の伝統的なファサードを現在に残す町家が点在する街区であり,空き地や駐車場が増える一方,現代的な住宅やマンションが混在する現状である.地区の持続的発展を検討するため,居住者の住宅形態からみた居住地に対する意識や要求を明らかにする.
【方法】1)2000年調査対象の奈良町北6地区(一戸建・長屋建)に質問紙調査を実施(世帯票配布数212,回収数182,回収率85.8%).加えて,マンション(回収数111票),アパート(同108票)居住者に質問紙調査を実施した(2011年10月).
【結果】1)2000年調査対象595例中76例が居住者の入れ替り,空き地・駐車場・空き家に変化.子の遠居や高齢夫婦の増加による家族形態の変化が,外観変化,空き家・空き地化として表出.2)一戸建・長屋建では定住者が5.5割,世帯主年齢は平均64.2歳,単身と夫婦のみがあわせて3割強.マンションでは転入者が7.6割,40代以下の世帯主が2.6割,夫婦と子が3割,子育て世帯が多い.アパートでは20代の単身,女子学生が多い.3)①転入世帯の地域活動・交流は少なく,自治会所有の「会所」を知らない者も多いが,転入者は町の歴史性を高く評価.②居住者は観光も考えた住宅地としての将来を希望.③子育て施設と観光客が利用可能な空間の要望がある.4)居住地の持続性のためには,新規転入をうながすことが重要であり,転入者が望む子育て空間,観光を考慮した町として観光客が利用できる空間を整備し,現存する会所や町家の活用が期待される.
※本研究は科研費(基盤C:家族形態・居住形態の変容にともなう歴史的居住地の持続性に関する研究)による.

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