抄録
目的 シイタケのうまみ成分のグアニル酸(5’‐GMP)は、加熱調理中にヌクレアーゼによるRNA分解により生成され、続いてホスファターゼの作用を受けると無味のグアノシン(GR)になることが明らかにされている。しかし、この2つの酵素以外の5’‐GMPの生成と分解に関与する酵素や代謝経路については、ほとんど報告が無い。本研究では、シイタケの5’‐GMP生成に関係するプリンヌクレオチド代謝経路の全体像を明らかにし、これまで注目されなかった経路のうまみ生成への寄与について検討を加えた。
方法 生及び50℃送風乾燥干しシイタケスライスを用いて14C標識したプリン代謝関連物質のトレーサー実験(25℃・4時間)を行い、粗酵素液でプリン代謝関連酵素活性を測定した。
結果 生シイタケには、5’-GMPの分解により生じるGRやグアニン(G)がサルベージ(再利用)されて5’‐GMPに再変換される代謝経路が存在した。グアニンヌクレオチドはアデニンヌクレオチドの変換によっても生成されたが、逆は起こらなかった。酵素活性測定結果から、GRは直接5’-GMP には変換されず、ホスホリラーゼによってGに分解されてか ら、GとPRPPから5’-GMP を生成するホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPRT)によって5’-GMP に再変換されると推定された。干しシイタケスライスでは、GPRT活性が生と同レベルで検出されたが、トレーサー実験ではGやGRはPRPPを添加した場合にのみ5’-GMP に変換された。干しシイタケでは限られた条件下でのみサルベージ経路による5’-GMP合成が起こると考えられた。