[目的]閉経後女性は肥満症や代謝症候群の罹患率が増加する。本研究は、卵巣摘出ラットにおいて高脂肪食(HFD)誘発性肥満とインスリン抵抗性に対するエストロゲン(E2)の作用を検討した。[方法]Wistar系雌性ラットを用い、9週齢にて両側卵巣を摘出し、13週齢にて17β-エストラジオールあるいは偽薬を皮下に埋め込み、それぞれE2群・Pla群とした。さらに、各群を普通食(SD)群とHFD群に分け、後者へHFD投与を開始した。17週齢で経静脈糖負荷試験を行い、経時的に血漿グルコース・インスリン濃度を測定した。2日後に、門脈へインスリン投与を行い、肝臓・腓腹筋を採取し、インスリンシグナル伝達分子であるAkt及び下流分子をウェスタンブロット法により分析した。[結果]HFD投与によりPla群では、SD群と比べてエネルギー摂取量が増え、体重が増加した。一方、E2群ではHFD投与により著しく摂食量が減少し、体重が減少した。内臓脂肪湿重量はPla群ではSDよりHFDの方が増加したが、E2群では変化がなく、どちらの食餌においてもPla群より低値を示した。また、インスリン抵抗性の指標であるグルコース・インスリン指数は、Pla群ではSDよりHFDで高値を示したのに対し、E2群ではHFDによる増加が見られなかった。一方、各臓器においてインスリンによるAktの活性化はみられたが、HFDやE2補充の影響はみられなかった。