抄録
【目的】カリンとマルメロ果実はともに豊かな芳香を持つが、果肉が硬く、強い渋みがあるため、生食ではなく、はちみつ漬けやリキュール、またエキス分をジャムとして利用されている。我々は、カリンとカリンに類似しているマルメロに関して、抽出液中のポリフェノールおよびペクチン等に着目し、ジャムを調製して色や物性との関係について検討した。
【方法】群馬県産カリンと山梨県産マルメロは、果実の芯部分を除去して薄切りし、水さらし後、水を加えて30分間加熱した(抽出液)。抽出液に70%濃度になるようエタノールを加えてペクチンを除去し、樹脂(アーバンライトXAD-4およびXAD-7)で、吸着部と非吸着部に分離した。抽出液、樹脂吸着部および非吸着部に果実に対し30%のスクロースを添加して加熱し糖濃度55%のジャムを調製し、ポリフェノール量、色(色差計、分光光度計)を測定した。一方、ペクチンを分画して定量し、カリン・マルメロの抽出液、ペクチン除去液および水と、各ペクチンを組み合わせて、ジャムを調製し、色と物性を測定した。
【結果】抽出液の分離はアンバーライトXAD-7を用いた方が、樹脂吸着部のポリフェノール量が多く赤色の発色が顕著であった。ペクチンについてはマルメロの方が総量が多く、その大部分は水溶性画分であった。マルメロジャムはカリンジャムに比べてかたさ応力が大きく、水溶性ペクチン量がジャムのかたさに影響することが示唆された。