一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
68回大会(2016)
セッションID: P-010
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ポスター発表 5月28・29日 食物
アワビ肝醤油の香気改善への発酵条件の影響
*孟 き菅原 悦子
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キーワード: アワビ醤油, 香気成分, 発酵
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抄録

目的:アワビの肝を用いた魚醤は他の市販魚醤より強い汗様、香ばしいにおいを有する。Zygosaccharomyces属の酵母を用いた発酵はアワビ肝醤油の香気改善に有効な方法であると昨年度の本大会で報告した。そこで、本研究では、アワビ肝醤油の発酵時におけるグルコース添加による香気改善への影響の解明を目的とした。
方法:グルコースの添加量を0.5% (G0.5)、2.5% (G2.5)と5% (G5)と変化させ、酵母Z.rouxii 061を用いてアワビ肝醤油を27℃、5日間振動培養した。遠心分離で除菌した培養液を80℃、30分間火入れ加熱した。火入れ加熱前後の試料からSPME法(SolidPhase Micro Extraction)により香気成分を抽出し、GC-O分析により各試料の香気特徴を評価した。さらに、AEDA(aroma extract dilution analysis)法により、G2.5試料の香気成分の寄与度を評価した。発酵前の生及び火入れ加熱したアワビ肝醤油も同様に分析した。各試料の香気成分はGC-MSにより同定した。
結果:GC-Oの結果、G2.5試料から感知できた香ばしい香気成分数はG5、G0.5試料より2倍多かった。火入れ加熱後、試料から感知できた香気成分の総数は減少したが、香ばしい香気成分数に変化はなかった。AEDAの結果、発酵前の生アワビ肝醤油では甘い2-phenylethanolのFD-factor(FDf)が最も高く、煮たジャガイモ様のmethionalと汗様のbutanoic acidのFDfも高かった。発酵後、G2.5の生試料では、2-phenylethanolのFDfがさらに高くなり、methionalなどのFDfが低下した。火入れ加熱後のG2.5試料でも2-phenylethanolのFDfが最も高かった。従って、グルコース2.5%添加の発酵法はアワビ肝醤油の香ばしい香気特性を維持すると共に、香気改善にも有効であると考えられる。

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© 2016 一般社団法人 日本家政学会
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