一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
68回大会(2016)
セッションID: 3D-01
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口頭発表 5月29日 児童
「気になる子ども」に対する保育者の支援について
保育経験年数に着目して
*岡野 雅子牧野 友里
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抄録

[目的] 近年「気になる子ども」に対する関心が高まっている。その定義は曖昧で、多くはボーダーラインと思われる子どもたちであり、保育現場では難しさや支援・配慮を要するなど気にかける必要がある子どもたちである。本研究は、保育者は「気になる子ども」をどのように捉えてどのような支援を行っているかについて、保育経験年数との関連から考察することを試みた。

[方法] 質問紙調査法である。調査対象者は、群馬県A市および東京都B区の全幼稚園・保育所に勤務する保育者である。調査票は郵送し記入後に郵送にて回収し、154名(A市103、B区51)の保育者から回答を得た。調査時期は2014年7月である。

[結果と考察](1)「気になる子ども」が「いる」「以前はいた」の回答は9割を占め、保育者の77%は小学校就学に対して不安を感じているが、特に中堅保育者(保育経験6-20年)は不安を感じる割合が高い。(2)就学に対する不安の内容は「衝動的行動」「固執的行動」「誤りの繰り返し」「言語伝達不良」に大別され、ベテラン保育者(保育経験21年以上)は「衝動的行動」「誤りの繰り返し」に強い不安をもつ者が多いが、しかし就学に対する不安の割合は減少していた。(3)支援・配慮については、保育経験の浅い保育者は、自分が発する「言葉かけ」を工夫し、当該児の変化については「言葉が伸びた」「問題行動が減った」など行動として表れる側面に着目するが、経験の長い保育者は「友だち関係の支援」「カリキュラムの工夫」を行っていた。(4)これらの結果から、経験年数の長い保育者は、「気になる子ども」についての理解に基づいて、自分と彼らとの直接的関係だけでなく、他児の存在や園の雰囲気などの保育環境がもつ全体的な保育力を生かした支援・配慮を行っているといえるようである。

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