主催: (一社)日本家政学会
会議名: (一社)日本家政学会第69回大会
回次: 69
開催地: 奈良女子大学
開催日: 2017/05/26 - 2017/05/28
目的 セイヨウトチノキ(マロニエ)は,欧米では街路樹として多く植えられている.結実時期には道端がセイヨウトチノミで覆いつくされる.食用とはならないため,その多くは利用されずに廃棄物となっている.セイヨウトチノミの再利用のため,「果肉・内皮」と「外殻」の部位に分け,各々の粉砕物の機能を調べるとともに,その配合紙も作製した.
方法 セイヨウトチノミをマスコロイダーにて粉砕し,所定量のパルプ,水,ラテックスバインダーと混合してスラリーを調整した.このスラリーを撹拌しながら角型シートマシンを用いて抄紙し,プレス,乾燥して配合紙を作製した.
結果 セイヨウトチノミの粉砕物は,黄色ブドウ球菌,大腸菌,ミュータンス菌に対して優れた抗菌性を示した.特に,グラム陰性菌である大腸菌に対しては高い抗菌性を示した.また,部位では,「外殻」の方が「果肉・内皮」よりもより高い抗菌性を示した.セイヨウトチノミの外殻の粉砕物のORAC値は531mmol TE/gを示し,抗酸化力が抗菌性に寄与したものと考えられた.つまり,菌の細胞壁を構成するペプチドグリカン層に抗酸化力が作用し,ダメージを与えたものと推察された.セイヨウトチノミの再利用として作製した配合紙には,粉砕物で示された高い消臭性が保持されていた.また,配合紙の力学物性は外殻の粉砕物の配合率が増すに従って低下するものの,実用的には充分なレベルを維持していることもわかった.