抄録
本研究では,上肢挙上における肩甲骨運動には運動学的変化点が存在するとの仮説に基づき,肩甲骨上方回旋運動の変化点を同定し,さらにその変化点の性差について比較検討した.対象は,男性35名,女性19名の健常成人とし,端座位にて3秒間で最大挙上となるように肩甲骨面挙上を行わせた.測定には,磁気センサー式3次元空間計測装置を用いて,肩甲骨上方回旋角を算出した.得られた肩甲骨上方回旋角に折れ線グラフを当てはめ,グラフの傾きが変化する点(変化点)が検出される上肢挙上角を男女間で比較した.分析の結果,肩甲骨上方回旋の変化点が検出された上肢挙上角は,男性:78.7±15.7°,女性:78.9±14.1°であり,男女間に有意な差は認められなかった.これらのことより,上肢挙上時の肩甲骨上方回旋は直線的に増加しないこと,男女ともに上肢挙上約80°に肩甲骨上方回旋の変化点が存在することが示された.