主催: 日本風工学会
共催: 電気学会, 日本鋼構造協会, 土木学会, 日本気象学会, 日本建築学会
p. 43-48
夏季高温静穏時に都心で孤立した積乱雲が発生した2004年8月10日の事例について,ドップラーソーダ,ドップラーレーダー等を用いた観測を行った。当日太平洋高気圧に覆われ,快晴で一般風は弱く,3 m/s 程度の海風が東京湾から進入した。この海風前線は3 km/h 程度で進入したが内陸10 km程度で停滞した。東京北部に12時ごろ地表面加熱に対応して熱的低気圧が形成され,明瞭な風のシアーラインが形成された。熱的低気圧に伴う風のシアーライン上で積乱雲(ファーストエコー)の発生が認められた。複数発生した積乱雲エコーセルのうち海風前線上に位置したエコーのみが高度10 kmまで発達した。この積乱雲の発生には地表面付近の風の収束がトリガーとして働いており,熱的低気圧に伴う風のシアーライン上で積乱雲は発生し,海風前線上で発達した。ドップラーソーダによる直接観測から,雲底下における1 m/s を超える上昇流の存在が積乱雲の発達に必要であることが示唆された。