九州歯科学会雑誌
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義歯床用流し込みレジンのレオロジー的性質に関する基礎的研究
杉野 泰彦
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1976 年 29 巻 5 号 p. 623-646

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抄録
最近流し込みレジンと呼ばれる義歯床用レジンが臨床でさかんに使用されるようになってきた.このレジンは, 従来の加熱重合型レジン, 常温重合型レジンとは成形法がかなり違っている.すなわち, 加圧成形せずに鋳型中に流し込みそのまま重合させるように改良されている.流し込みレジンは加熱重合型レジン, 常温重合型レジンに比べて, 粉末に対する液の量が最も多く(L/P比が最も大きく), 重合温度は他の二つの型のレジンの中間に位置する.このような重合条件の相異のため, 流し込みレジン重合体の力学的性質は加熱重合型レジン, 常温重合型レジン重合体の場合と幾分異なっていることが予想される.そこで著者は, 現在市販されている流し込みレジン(国産一種類, 外国製二種類), ならびに純粋なメタクリル酸メチルとその粒状重合物を用いて調整した市販品類似の試作流し込みレジンについて, 加熱重合型レジン, 常温重合型レジンとの物理学的性質の相異を比較検討した.検討した項目は粉末の粒度, 重合体の比容積, 動的粘弾性, 摩耗度などである.これらの測定から, 次のような結論が得られた.(1)流し込みレジンの貯蔵弾性率は加熱重合型レジンの貯蔵弾性率よりも低く, 常温重合型レジンの貯蔵弾性率よりも高くなったが, これはL/P比の違いよりも重合温度の違いの方が貯蔵弾性率に大きな影響を与えることを示すものと思われる.(2)市販の流し込みレジンは耐摩耗性が試作流し込みレジンよりも大きいことから, 架橋剤を含んでいるものと考えられる.(3)流し込む時点における流し込みレジンの粘度は十分低いことが望ましい.したがって, 鋳型内にレジンを流し込む時期はできるだけ早く, 流し込み時の室温はなるべく低い方がよい.
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© 1976 九州歯科学会
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