九州歯科学会雑誌
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原著
新分類法(WHO 2005)に基づく日本人における歯原性腫瘍の臨床病理学的検討
張 皿福山 宏松尾 拡山下 善弘平島 惣一高橋 哲福田 仁一
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2007 年 61 巻 2.3 号 p. 55-66

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抄録

緒言:2005年6月にInternational Agency for Research on Cancer(IARC)から「頭頸部腫瘍のWHO分類」が出版され,この中で歯原性腫瘍のWHO組織分類(1992)も再改訂された.この再改定によって,本学における歯原性腫瘍全体を見直す必要があり,今回われわれは,過去20年間(1985~2004)九州歯科大学付属病院症例からの歯原性腫瘍について,新分類に基づいて臨床病理学に検討を行ったのでその概要を報告する.
対象および方法:対象は1985年1月より2004年12月までの20年間に九州歯科大学第1および第2口腔外科を受診した7,027名の内,生検や手術摘術材料から,口腔病理学講座で歯原性腫瘍と確定診断された289例(4.11%)を抽出し,新分類に基づいて性別,年齢,部位,発生頻度などについて検討した.
結果:発症頻度では289例のうち良性腫瘍は287例(99.31%)であり,悪性腫瘍はわずか2例(0.69%)であった.良性腫瘍の発生頻度は,角化胞性歯原性腫瘍86例(29.76%)が最も多く,次はエナメル上皮腫81例(28.03%),次いで歯牙腫が77例(26.64%)で,その中に複雑性歯牙腫48例(62.34%),集合性歯牙腫29例(37.66%),であった.この三者で全体の84.43%を占めていた.性別では歯原性腫瘍全例では,男性153例,女性136例で男女比は1.0.91でやや男性に多くみられた.発生年齢は,最低2歳から最高99歳まで,平均年齢は32.36歳であった.年代別では10歳代が最も多く88例で30.45%,ついで20歳代が55例で19.03%,30歳代が37例で12.80%,10歳代から30歳代でほぼ全体の2/3を占めていた.で1/2以上を占めていた.発生部位では部位別発生頻度では,下顎215例(74.39%),上顎74例(25.61%)で下顎に多く発生し,上顎のほぼ3倍を占めていた.下顎では,大臼歯部を中心に発生する症例が119例(55.35%)と最も多く,下顎での半数以上を占めいた.
考察:今回の統計結果では本学では20年間で歯原性腫瘍は289例(4.11%)で,その中では角化胞性歯原性腫瘍の発生頻度は86例(29.76%)で最も多く,ついでエナメル上皮腫であった.この結果は他の報告とは少し異なっていた.性差,発生部位では他の報告と同様であった.年齢の分布においては他の報告と同様であったが,最高年齢99歳にみられたエナメル上皮腫での症例は過去に報告されたことがない.
結語:本学20年間に経験した歯原性腫瘍289例についてWHOの新しい分類(2005年)に基づいて発生頻度,性別,年齢,部位を調べて臨床病理学的に検討して報告した.新しくシフトした疾患の歯原性腫瘍としての位置付けは,臨床的に喚起を要することを報告した.

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