九州歯科学会雑誌
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歯根膜における弾性線維の役割の探索
志賀 百年川元 龍夫
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2018 年 72 巻 1 号 p. 1-6

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抄録
ヒトにおける弾性線維は全身の様々な組織に存在する.弾性線維はターンオーバーが非常に遅く,加齢による劣化 が起きても修復が遅れ,組織の弾性の低下がおこり,疾患の発症原因となっている.例えば動脈においては動脈硬化, 肺においては肺気腫が弾性線維の劣化が病態と考えられている.口腔領域においては加齢とともに歯列の不正や歯周 病などが惹起される割合が高く,その一因として歯根膜の弾性線維の劣化に関連した恒常性の低下が考えられる. Marfan症候群(MFS,MIM#154700)は弾性線維の主な構成要素であるフィブリリンの遺伝子異常が原因である.高身長,細長い指,などの骨格の異常,水晶体亜脱臼などの眼の異常,心臓の弁の異常や大動脈瘤を主徴とする.MFS はフィブリリンの異常と病態の関係が以前より注目され,心臓や肺などの組織を中心に研究が進んできた.歯根膜に おいては線維成分の主要な構成要素はコラーゲン線維と弾性線維であり,弾性線維のほとんどは,オキシタラン線維 である.しかしながら歯根膜弾性線維の劣化と歯根膜恒常性に関しての研究報告はほとんどなく,その役割について は依然,解明されていないことが多い.今回は歯根膜における弾性線維の役割に関して今までに報告された知見に基 づき解説するとともに,今後の展望に関して報告する.
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