九州歯科学会雑誌
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とろみを添加した飲料による前頭前野への影響について
庄野 幸音増田 渉浪花 真子吉野 賢一
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2020 年 74 巻 1 号 p. 1-9

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抄録
多くの医療機関や介護施設において,誤嚥予防として食品形態を調整するためにとろみ調整食品(以下,とろみ剤)が使用されている.とろみ剤による食品形態の変化が喉頭侵入や誤嚥,咽頭残留に及ぼす影響についての報告は多いが,脳機能との関連については不明な点が多い.本研究では,とろみがもたらす前頭前野への影響について,非侵襲的な脳機能測定法である機能的近赤外分光法を用いて検討した.被験者は右利き女性42名(平均年齢21.4±0.6歳)であった.被験者に粘性の異なる3種類の緑茶およびジュースを味わう課題を行わせ,OEG-16により課題中の前頭前野の活動を記録した.緑茶およびジュースを味わっているときの前頭前野の活動をBrain Analyzerにて解析した.本研究において被験者の嗜好性の低下が不快情動となり,眼窩前頭皮質(11野)の活動に反映される可能性が示唆された.また,とろみを添加した飲料は前頭極(10野)および11野の活動を変化させることを見出した.脳活動の変化は,飲料に対する嗜好性の変化や味の違い,新奇性などによるものだと考えられた.主に誤嚥予防のために使用されるとろみ剤は,前頭前野,とくに10野および11野の活動の変化を促す目的としても使用できる可能性が示唆された.本研究より,とろみ剤を使用した今後の摂食嚥下リハビリテーションにおける新たな訓練法の開発,認知症の予防などへの臨床応用が期待できると考えられる.
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© 2020 九州歯科学会
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