九州歯科学会雑誌
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口蓋に生じた色素沈着に乏しい母斑細胞母斑の1例
高橋 理鶴島 弘基吉岡 泉
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2020 年 74 巻 3-4 号 p. 56-60

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抄録

母斑細胞母斑は母斑細胞が異常増殖することによる過誤腫的増殖物とされており,口腔粘膜に発生することは比較的まれである.今回われわれは口蓋粘膜に発生し,色素沈着に乏しい母斑細胞母斑の1例を経験したのでその概要について報告する.患者は32歳の女性.近在歯科医院にて30歳頃より左側口蓋の膨隆を指摘されるも放置し,症状が消失しないため,当院を紹介された.左側上顎大臼歯の口蓋側歯肉に23×15mmの弾性軟,大部分は正常粘膜色であったが,一部に茶褐色を呈した腫瘤を認めた.CT検査で明らかな歯槽骨の吸収は認めなかった.生検を行ったところ,粘膜固有層から粘膜下層に類円形のリンパ球様の母斑細胞の増殖やSchwann細胞様の紡錘形細胞とMeissner小体様の構造物を認め,母斑細胞母斑の診断を得た.全身麻酔下に骨膜を含めて腫瘍を切除し,右側口蓋の粘膜を採取して移植を施行.術後の経過は良好であり,術後1年半が経過するも再発は認めない.

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