九州歯科学会雑誌
Online ISSN : 1880-8719
Print ISSN : 0368-6833
ISSN-L : 0368-6833
第81回九州歯科学会総会・学術大会(2022)シンポジウム「歯科臨床における最新の知見」:これまでに得た周術期患者に対する口腔管理の知見
船原 まどか
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 76 巻 p. s9

詳細
抄録
近年、医科歯科のみならず多職種の連携が重要視されて久しい。歯科においては周術期 や全身疾患の加療を受ける患者の、口腔有害事象の発症や悪化を予防することによる支持 療法が期待されている。今回、これまで演者が取り組んだ研究を踏まえ、多職種連携を行 う上で重要と考えられる周術期(手術時)や、薬剤関連顎骨壊死の予防について、現在考え る口腔管理方法について下記のようにご紹介する。 1)がん手術時の手術部位感染予防  頭頸部がんや食道がんの手術部位感染(SSI)は創部に唾液中の病原性微生物が暴露する ことが原因の一つと考えられ、唾液中の細菌数を減少させることを目的とした口腔管理方 法を模索してきた。その結果、①手術直後から常食摂取が可能な場合はセルフケアを中心 とした口腔管理を励行する、②手術後に常食摂取が制限される場合はポビドンヨード含有 含嗽剤による含嗽を中心とした口腔管理を行う、③手術後に挿管や気管切開で呼吸管理を される場合は水による洗浄、ポビドンヨードの口腔内塗布が有効であることなどを報告し てきた。さらに気管切開を伴う口腔がん手術では、手術後48時間テトラサイクリン軟膏を 口腔に塗布することによりSSIを有意に抑制できることを検討した。一方、大腸がんにお いても口腔管理によりSSIの発症を抑制できることを報告したが、これは唾液の直接暴露 というよりは、遠隔感染巣である歯周病からの大腸への血行性感染を予防したと考えられ る。そのため少なくとも手術の1週間前までに感染源の除去や歯周病の初期治療を終えて おくことが理想的であると考える。 2)がん手術時の術後肺炎予防  周術期口腔機能管理により食道がんや肺がん手術時の術後肺炎のリスクが減少すること を報告してきた。口腔管理方法は上記のSSI予防のための口腔管理と同様であると考える。 3)薬剤関連顎骨壊死の発症予防、悪化予防  骨粗鬆症治療には、副作用として薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を引き起こすBP製剤や、 抗RANKLモノクローナル製剤などが用いられる。またこれらの薬剤は低用量では骨粗鬆 症治療時に使用されるが、乳がんや肺がん時の骨転移予防には高用量のものが用いられる。 これらの患者に対しMRONJを予防すること、また発症した場合には悪化予防に注力する ことが期待されている。当院口腔保健科においても、これらの薬剤を服用している患者が 散見され、歯科医師だけでなく、
著者関連情報
© 2022 九州歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top