抄録
近年,医科歯科のみならず多職種の連携が重要視されてきた.チーム医療における歯科の役割として,一般歯科治療に加え,有病者や周術期の患者の口腔有害事象の発症や悪化を予防する支持療法も期待されている.われわれはこれまで,周術期における術後感染予防を目標とし,術後の唾液中細菌数を減少させることを目的とした口腔管理方法の検討に取り組んできた.そのなかで,手術後の摂食状態が術後の唾液中細菌数に影響を与える因子であることが示唆された.このことにより,術後の摂食状態別に,口腔ケア方法を変更することが望ましいと考える.また,医科との連携が重要視されているトピックとして,骨粗鬆症やがんの骨転移に対する薬剤療法の際の副作用である薬剤関連顎骨壊死(Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw:MRONJ)が挙げられる.MRONJは2003年の報告からさまざまな研究がなされてきたが,現在においても予防法や治療法な確立していない.しかし日常臨床において,骨粗鬆症やがん治療の既往があり,副作用にMRONJ発症リスクのある薬剤服用の履歴がある患者の診療にあたっているのが現状である.MRONJ発症予防を観点においた診療では,患者の現病歴および既往歴,服用薬剤,年齢と性別などの問診,そして口腔内診査と定期的なパノラマエックス線写真撮影によるリスクの抽出と,口腔衛生状態の維持,感染源の除去がポイントとなる.またMRONJを発症し,痛みがないstage 1の状況では,悪化予防のために口腔内診査,パノラマエックス線写真撮影,露骨部を消毒作用のある含嗽剤を用いてブラッシングすることを含めた口腔衛生状態の維持に努める.病変が進行しStage 2以降では患者の疼痛も出現するため,手術を視野にいれた治療方針の立案が必要となる.