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原著論文
看護師が安全に静脈内注射を実施するために必要な解剖学的知識
栗田 愛原 好恵太田 慶一篠崎 惠美子為永 義憲藤井 徹也
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2014 年 13 巻 2 号 p. 71-78

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抄録
看護師が安全に静脈内注射を実施するためには解剖・生理に関する知識が必要とされる。しかし、看護師の静脈内注射に関する解剖学的知識と静脈内注射の実施方法について調査したものはない。そこで、看護師の静脈内注射に関する解剖学的知識と静脈内注射の実施方法について明らかにし、安全な静脈内注射の実施に繋がる課題を検討した。  本研究は3県の総合病院10施設に勤務する看護師に無記名自記式質問紙調査を実施し、482名を分析対象とした。  調査の結果として、肘窩部の尺側皮静脈において正中神経や上腕動脈が近接することについて「聞いたことはあるが詳しいことは知らない」と「全く知らない」は合わせて42.7%であった。手首・手背部の橈側皮静脈を最も優先して選択すると回答した者は、静脈内注射(以下:ワンショット)では53.5%、点滴静脈内注射では57.7%であった。肘窩の尺側皮静脈を優先して選択すると回答した者は、ワンショットは11.8%、点滴静脈内注射は9.3%であった。そして、肘窩部の尺側皮静脈における正中神経や上腕動脈の近接に関する知識をもっていないと回答した看護師ほど、神経損傷や動脈穿刺の危険性の高い肘窩部の尺側皮静脈を選択する傾向にあった。また、静脈内注射実施時の静脈弁に対する意識は「全く意識していない」と「わからない」は合わせて55.6%であり、血管確保時に静脈弁を意識せず損傷させている可能性があった。看護師経験年数が少ない者ほど肘窩部の尺側皮静脈における正中神経や上腕動脈の近接に関する知識を持っておらず、静脈内注射実施時の静脈弁および皮静脈深部を走行する神経や動脈に対する意識が低い傾向にあった。  以上のことから、看護師が安全な静脈内注射の実施をするためには、静脈の走行だけでなく神経・動脈の走行および静脈弁に関する解剖学的知識について学ぶことが重要である。また、経験年数が少なくても安全に実施できるよう継続教育において知識を教授する必要がある。
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© 2014 コ・メディカル形態機能学会
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