形態・機能
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原著論文
看護学生に解剖体見学実習を1回行う重要性
川真田 聖一青山 裕彦黒瀬 智之
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2015 年 14 巻 1 号 p. 12-21

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抄録

本研究は、解剖体見学(見学実習)を1回実施して、その教育効果を調べた。見学実習前の看護学生に、ヒトのさまざまな解剖学的構造の輪郭を、想像している大きさで紙に描いてもらった。見学実習後に、看護学生にもう1度、これらについて新しいイメージの大きさで輪郭を描いてもらった。また、学生に、さまざまな器官の実物の大きさについて、想像していた大きさと比較した主観的な印象を質問した。ほとんどの学生は、心臓、上行大動脈、肺と肝臓が、想像より大きかった。対照的に、気管、脊髄と子宮は、一般に想像より小さかった。脊髄は、見学実習前はほとんどの人が非常に大きく、そして見学後も一部の人は大きく描いた。描いた輪郭の最大径は、見学実習前と実習後がそれぞれ、心臓は92.7±14.5と105.8±16.3mm(平均±標準偏差、n=187)、上行大動脈は17.3±8.1と26.4±6.3mm(n=185)、気管は22.9±10.1と18.1±6.7mm(n=184)、脊髄は41.4±28.1と13.4±10.3mm(n=111)だった。本研究で、看護学生の大部分が、小さいにせよ大きいにせよ、ヒトのさまざまな解剖学的構造の大きさを誤って理解しており、見学実習が誤りを訂正するのに非常に有用であることが明らかになった。見学実習は、他分野のコ・メディカル学生にも、このような教育効果が期待される。見学実習は非常に有用であるが、日本ではかなりの割合の看護学生は、解剖体に接する機会がほとんどない。見学実習の解剖学的および他の教育効果を考慮に入れると、人体標本に接する実習を、それぞれの職種の必要性に応じた実習方式で、看護学生には少なくとも1回、そして他のコ・メディカル学生にも、もっと広汎に実施すべきである。

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© 2015 コ・メディカル形態機能学会
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