2015 年 14 巻 1 号 p. 3-11
本研究は静脈穿刺時の橈骨神経浅枝損傷を防ぐために、手首付近での橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の交叉の位置と頻度を明らかにすることを目的とした。本学において解剖実習に供されたご遺体28体28右肢の前腕、手首、手背を用いた。外側上顆から橈骨茎状突起までの距離は22.3±1.7cm であった。橈骨茎状突起より近位6.7±0.8cm の地点で橈骨神経浅枝が腕橈骨筋の深部より皮下に出現し、この神経より内側に位置する橈側皮静脈と伴行、下行した。この橈骨神経浅枝の出現部位は、外側上顆から橈骨茎状突起までの距離の遠位30.0±3.3%に位置していた。また、皮下に出現した橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の交叉の頻度は、橈骨茎状突起より近位で62.6%、遠位で17.1%、橈骨茎状突起の位置で14.3%であった。また、橈骨神経浅枝は常に橈側皮静脈より深層に位置していた。橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の太さの比は0.88±0.31であった。以上の結果より、外側上顆から橈骨茎状突起までの距離の遠位約1/3の位置で静脈穿刺を実施する際には、橈骨神経浅枝と橈側皮静脈の位置関係を考慮して行う必要があることが示唆された。