経済分析
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四半期国民経済計算(QNA)の改善に向けて~主要先進国のアプローチから~
多田 洋介
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2023 年 207 巻 p. 282-323

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抄録

新型コロナウイルス感染症は、各国の経済に対し、過去にない規模の甚大な影響を与えた中で、よりタイムリーに経済への影響や政策の効果を捕捉できるデータへのニーズが高まっている。この中で、国民経済計算(SNA)は、マクロの集計量である国内総生産や、家計や企業等の部門別の収支構造という体系整合的、包括的な情報の提供に強みがあり、世界的にも、より広範なSNA上の指標を四半期ベースで作成・公表する取組が進行中である。本稿では、主要先進国として、ドイツ、フランス、英国、アメリカを例に、四半期別GDP速報における三面GDPの整備状況や精度向上の取組、並びに、SNAの中心的体系である制度部門別勘定の四半期統計の整備状況や実用的な意義について分析し、日本における今後の四半期別国民経済計算の整備に向けた含意を引き出す。GDP速報においては、ベストプラクティスと呼べる単一のロール・モデルは存在しない中で、日本においては、現在主たる系列である支出面のGDPについて、より年次推計と整合性を高めるよう供給側のアプローチよるさらに詳細な推計を行いつつ、チェック・バランス機能をもたせるためにも他の側面からの速報値の開発を更に進めることが重要である。また、整備が遅れている四半期別制度部門別勘定については、分配面の四半期GDP速報の開発と並行し、特に情報が欠落しているが企業部門の一連の勘定を整備していくことが重要であろう。

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© 2023 内閣府経済社会総合研究所
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