経済分析
Online ISSN : 2758-9900
Print ISSN : 0453-4727
207 巻
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 野村 浩二
    2023 年 207 巻 p. 1-21
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
  • ジョルゲンソン デール・W
    2023 年 207 巻 p. 22-85
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    GDPはその発案者たちによって生産の指標として意図されたが、国民経済計算に厚生の指標が存在しないため、GDPの厚生指標としての誤用が広く行われている。経済政策の変更による効果を見積り、その結果を評価するためには、厚生の指標が必要である。貧困や不平等など、所得分配を表す概念は、生産よりも厚生の範疇に入る。本稿では、主に米国や国際機関における、国民経済計算の中での生産と厚生の測定に関する最近の進展を概観する。国民経済計算の枠を超えたフレームワークの拡張は、生産と厚生の双方の測定における重要な革新をもたらしてきた。
  • 野村 浩二, 宮川 幸三
    2023 年 207 巻 p. 86-120
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    副業の生産構造の把握は GDP 統計構築の基盤となる役割を担い、統計先進国でもその改善に向けた取り組みが継続されている。日本では 2011 年を対象として「経済センサス-活動調査」の売上調査が実施されるものとなった。2015 年にも継続された同調査では、事業所ごとの主活動は日本標準産業分類(JSIC)の小・細分類に基づき格付けられるが、主活動の属する事業別内訳を超える副次的生産物の売上把握は 22 分類という大枠のみに限られ、ベンチマーク生産体系の把握における精度改善を阻む大きな障害となっている。本稿では経済産業研究所「売上の多様化に関する調査」(Survey on Diversification of Sales:SDS)に基づき、主活動(JSIC小分類)と副次的生産物(SDS生産物900分類)との間の類型を抽出し、ベンチマーク生産体系の現行精度を評価しながら、将来の統計調査票における改善の方向性を探ることを目的としている。本稿の試算結果によれば、現行の 2015 年産業連関表における副次的生産物の国内生産額として 13.0 兆円、GDP に換算して 6.3 兆円が欠落している可能性が示される。
  • 野村 浩二, 宮川 幸三
    2023 年 207 巻 p. 121-144
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    卸・小売業における国内産出額のベンチマーク推計では、従来「商業統計調査」を基礎資料としていたが、2011年以降では「経済センサス–活動調査」に基づくフレームワークへと大きく改訂された。1995年から2015年までのベンチマーク年における本稿での検討によれば、こうした改訂は産業連関表基本表の測定精度に大きく影響を与え、現行推計値は大幅に過小評価されている可能性が大きいことが指摘される。卸・小売業のGDPとしての欠落を評価すれば、経済センサスに基づくこととなった2011年には15.8兆円(一国集計GDPの3.2%)、2015年では11.3兆円(同2.1%)に上る。こうした過小推計バイアスの発生は、直接的には販売額未記入への補完推計の未実施など複数の要因によるが、日本の過度な分散型統計システムの弊害でもある。国民経済計算の精度改善のためには、ベンチマーク推計とそれに基づく年次推計が相互に十分な検証プロセスを持つことが求められる。
  • ディーワート アーウィン, 清水 千弘
    2023 年 207 巻 p. 145-170
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    不動産価格統計の整備が国際的に進められている。本論文は、商業系の不動産価格指数の整備が、国民経済計算体系のなかでどのように活用ができるのかを整理したものである。GDP統計における不動産業のアウトプット価格として、不動産価格指数が必要となることは言うまでもない。全要素生産性が国民経済計算の一部として計算される場合には、中間投入として土地及び建物価格指数も必要になる。本論文では、商業不動産価格指数(CPPI: Commercial Property Price Index)を構築するための既存の方法をレビューし、GDP統計における位置づけを整理するとともに、新しい指数の推計方法について提案する。
  • ヒル ロバート・J, スタイラー ミリアム, 清水 千弘
    2023 年 207 巻 p. 171-190
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    国民経済計算(SNA)や消費者物価指数において、住宅サービス、とりわけ持ち家のサービスは、最も困難な測定対象の1つである。多くの国では、帰属家賃という概念の下で、測定をしている。帰属家賃とは、ある人が住宅を所有し、居住(使用)するために支払わなければならない家賃のことをいう。日本・米国では、国内総生産(GDP)の約1割を占め、消費者物価指数(CPI)ではおおよそ4分の1のウェイトを占めている。このように、帰属家賃はGDPやCPI統計に大きなウェイトを持つことで、年金支給、賃金交渉、税制、マクロプルーデンス政策、金融政策などに影響を及ぼす。GDPやCPIに大きなウェイトを持つことから、帰属家賃の測定の正確性・精度は、国の統計機関や中央銀行にとって、高い関心の対象となる。さらに帰属家賃は所得格差の推定値にも影響を及ぼす。帰属家賃を不平等指標に含めると、持ち家所有者の調整後所得が賃貸住宅所有者に比べて大幅に増加するためである。地域別または国別の消費水準や不平等度を生み出している多くの部分が、住宅サービスに由来する。財政分野でも、帰属家賃は重要な税収源となる可能性があるため注目されている。本稿は、帰属家賃の様々な利用方法と、その主な測定方法について検討し、今後の課題を論じる。
  • 野村 浩二
    2023 年 207 巻 p. 191-219
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    非市場産出である教育サービスではさまざまな測定法が検討されてきたが、適切な評価のためには共通のデータ基盤を持つ整合的な測定値の開発が欠かせない。本稿は、日本の学校教育サービスに関する詳細なクロス分類データである「教育サービス産出データベース(ESJ)」、そしてESJに基づき構築された「教育分析用拡張産業連関表(EIOT)」の長期時系列データを基盤とし、教育サービスの質の変化を反映した価格・数量指数の測定として複数のアプローチから接近する。その測定は1955年から2019年までの長期をカバーし、測定法としてⅠ.単純産出数量法、Ⅱ.産出数量法、Ⅲ.投入法、そしてⅣ.ハイブリッド法(狭義の教育活動に産出数量法、その補助的活動に投入法を適用)の4つが適用される。産出数量法(ⅡとⅣ)における産出指標としては、一般に想定される教育サービスの需要側に着目した生徒数や生徒授業時間に加え、教育サービスの供給側に着目した教員授業時間が定義される。そうした組み合わせによる8つの測定結果によれば、教育サービス需要側の産出指標に基づく産出数量法の適用は少子化の進行に伴い有効性を低下させており、(産出指標を教員授業時間とする)Ⅳ.ハイブリッド法の適用が有効であると評価される。
  • 西崎 寿美, 桑原 進
    2023 年 207 巻 p. 220-249
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    内閣府経済社会総合研究所では、GDP統計の推計の精度向上を図ることを目的に、医療の質の変化を反映した価格の把握手法について研究している。本稿では、諸外国や国際機関等における研究成果をもとに基本的な考え方を整理し、医療データを用いたデフレーターの推計について、手法を検討の上、試算を行い、課題の抽出と考察を行った。 具体的には、厚生労働省の「匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報(NDB)」を活用し、傷病分類を細分化することで医療の質を調整する手法を用いてデフレーターの試算を行った。推計の結果、傷病ベースのデフレーターは緩やかに上昇していることがわかった。しかし、今回の試算には、医療の質を調整する上で検討すべき大きな課題が残されている。例えば、今回活用したレセプト情報には技術的に多くの制約があり、また、品質調整にいたっては、国際的にみても、確固とした方法は未だ確立されていない。このため、今回の推計結果は、医療の質を反映したデフレーター研究における一里塚といえよう。 医療デフレーターの推計方法は各国における医療制度の変化を反映しながら発展してきており、今後、医療の質の変化を反映したデフレーターを国民経済計算に本格導入していくためには、より詳細なNDBを活用した推計に加え、内外における医療制度の変化や品質調整に関する国際的な研究の動向を注視しつつ、多面的に研究を進めていくことで、課題を順に克服していく必要がある。
  • 長谷川 秀司
    2023 年 207 巻 p. 250-281
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    国民経済計算体系(SNA)において経済のデジタル化を的確に反映するための議論が活発化しており、その一環として経済協力開発機構(OECD)よりデジタル経済の把握に適した産業、生産物及び取引の分類を設定した「デジタルエコノミーに係る供給・使用表(デジタルSUT)」の中でデジタルの経済活動を包括的に測定するための概念的枠組み‐「ガイドライン」‐が提示された。既に試行に取り組んでいる各国同様、「ガイドライン」に可能な限り則しつつ日本のデジタルSUTの試算を行った(対象年は2015年及び2018年)。また、インターネット上で提供されるソーシャルメディアや検索サービス等の無償デジタルサービスはSNAの生産境界外であるが消費者の厚生に大きな影響を与えている。その価値の測定に関して推計手法やSNA上の概念的枠組みの研究が進展しており、主要な成果について概説する。現在2008SNAは改定作業が行われているが、デジタルエコノミーの最重要の資源であるデータは資産計上が見込まれ、その測定・評価はGDP等集計値に大きな影響を与えることになる。
  • 多田 洋介
    2023 年 207 巻 p. 282-323
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症は、各国の経済に対し、過去にない規模の甚大な影響を与えた中で、よりタイムリーに経済への影響や政策の効果を捕捉できるデータへのニーズが高まっている。この中で、国民経済計算(SNA)は、マクロの集計量である国内総生産や、家計や企業等の部門別の収支構造という体系整合的、包括的な情報の提供に強みがあり、世界的にも、より広範なSNA上の指標を四半期ベースで作成・公表する取組が進行中である。本稿では、主要先進国として、ドイツ、フランス、英国、アメリカを例に、四半期別GDP速報における三面GDPの整備状況や精度向上の取組、並びに、SNAの中心的体系である制度部門別勘定の四半期統計の整備状況や実用的な意義について分析し、日本における今後の四半期別国民経済計算の整備に向けた含意を引き出す。GDP速報においては、ベストプラクティスと呼べる単一のロール・モデルは存在しない中で、日本においては、現在主たる系列である支出面のGDPについて、より年次推計と整合性を高めるよう供給側のアプローチよるさらに詳細な推計を行いつつ、チェック・バランス機能をもたせるためにも他の側面からの速報値の開発を更に進めることが重要である。また、整備が遅れている四半期別制度部門別勘定については、分配面の四半期GDP速報の開発と並行し、特に情報が欠落しているが企業部門の一連の勘定を整備していくことが重要であろう。
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