結核
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最近経験した珪肺結核の1症例
平田 世雄
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2006 年 81 巻 2 号 p. 63-69

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抄録

症例,68歳男,喫煙歴30本/日*50年。墓石加工業の家業を継ぎ,5年前住民検診で既に珪肺を指摘され,以降も年1回の検診を受けてきた。主訴は咳,発熱,体重減少と血痰の喀出。初診時の胸部X線像は粒状影pの散布と右肺門リンパ節の卵殻状石灰化でI~II期の珪肺と考えられた。しかし粒状影の融合傾向,CTでの斑状影の形成,さらに左下肺野に虫喰い様の空洞を有する塊状影を認めた。以上の所見で珪肺結核を経験しない著者は診断に苦慮し,経過観察となった。10カ月後再度結核のシュープで,画像上感染源と思われる右肺尖部の陳旧性病巣の空洞化を始め,右S2 ,S3,S6と左肺底区の塊状影に一致して,共に壁が平滑な空洞を認めた。かつ気管支鏡検体および喀痰で菌陽性と判明したため珪肺結核と診断し,化学療法を行い軽快した。本症例の胸部画像について供覧し,さらに塊状影(Silicoticconglomeration)の病態に考察を加え,初診時の経気管支擦過細胞診,シュープ時の経気管支肺生検(transbronchiallungbiopsy/TBLB)の病理所見,さらに治療後の陰影の吸収状況などから,本結節は類上皮肉芽腫を交えた複合する炎症性肉芽組織で,珪肺に見られる塊状線維化巣(PMF)とは異なることが確認された。

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© 日本結核病学会
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