抄録
本研究は多読(Extensive Reading: ER)および新聞記事を用いたライティング活動と 同義語および文法に関する明示的指導を統合した指導が、日本人大学生 EFL 学習者の英語ライティング能力の発達に与える 影響を検証したものである。 対象者は 14 週間にわたる指導プログラムに参加した大学 2 年生 15 名であった。本プログラムではインプット重視の活動とフォーカス・オン・フォーム型指導を組み合わせた。データは、語彙テスト、文法テスト、読解速度測定、および 5 回の制限時間付の新聞記事へのライティング課題を通して収集された。ライティング能力は、複雑さ、正確さ、流暢さ (complexity-accuracy-fluency: CAF)の枠組みに基づいて分析した。その結果、生産的語彙知識および読解の流暢さにおいて顕著な向上が見られた一方、文法知識の伸びは比較的限定的であった。また、総語数が多い学習者ほど、ライティングの流暢さおよび統語的複雑さが高く、とりわけ重文・複文の使用が増加する傾向が確認された。さらに、文法知識の高さは統語的複雑さと関連していたが、複雑性の増加は一部の場合において正確さの低下を伴っており、これは形式よりも表現を優先する言語的リスクテイキングとの相反関係を示唆している。
これらの結果から、多読および新聞記事などの真正教材は学習者の流暢さと動機づけを高める一方で、高度なライティング産出を支援するためには、文法および語彙に対する明示的指導が不可欠であり、教師による補正的なフィードバックが特に初級者には優位に動機づけできる ことが示された。 インプット重視とフォーカス・オン・フォーム型指導をどのように統合すべきかについて長期的研究の必要性が示唆された。