抄録
近年、美術館が今まで取り込んでいなかったコミュニティをターゲットにする試みは刺激的であり、多種多様な社会を作る上で重要な意味を持つと考えられる。しかし、全てを網羅しているとはいえないのが現状である。
したがって、地域の文脈の中で見過ごされているコミュニティを特定し、鑑賞者が参加することによって帰属意識を育むことができるような博物館体験を作り出すことが重要である。今回は慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)に焦点を当てることとした。予備調査では、KeMCoでの実践において、留学生が見過ごされているコミュニティであることが明らかとなった。
そこで本研究では、オブジェクト・ベースト・ラーニング(OBL)を通じて、留学生に包括的なKeMCo体験を提供することを目指す。留学生が自国文化の視点から展示物を解釈できるように、展示にワークショップの要素を加えることを提案する。
ワークショップでは、留学生自身の文化的背景から日本の展示物を解釈し、積極的に展示と向き合う様子が見られた。最終的には、KeMCo展のテーマを西洋文化の視点から解釈したオンライン展示を開催した。
このワークショップは、観覧者の参加意識を高めて複数の解釈を促し、意思決定を与えることによって、多様性の促進に貢献している。