抄録
慶應義塾ミュージアム・コモンズは2021年に参加型展覧会「オブジェクト・リーディング:精読八景」展を開催した。本展では、大学の様々なコレクションを紹介すること、専門領域により異なる作品・資料への多様な視点を表現すること、モノとの研究的な関わりの中に来館者が参加する場を創り出すことを狙いとした。
本稿では、「精読八景」の参加型展覧会としての課題を改めて振り返り、再設計に向けた検討を行う。まず、参加を促す枠組みとして用いたオブジェクト・ベースト・ラーニング(OBL)について、その概要と過去のKeMCoにおける実践との関わりを記述する。次にOBLを展覧会へ適用する際の課題を明らかにし、会場で使用するツールと展示構成の2側面から展覧会の再設計を検討する。そしてこれらの検討を通じて、大学ミュージアムにおける参加型展覧会の持ちうる役割とそのシチズン・サイエンスへの接続の可能性について言及する。