2019 年 54 巻 1 号 p. 19-23
走査型透過電子顕微鏡法ではナノメートルオーダーの格子変形が直視できるようになり,物質・材料の原子レベルでの構造解析において極めて有効な手法となった.多くの機能性材料において物性発現サイズがナノスケールとなり,表面,ヘテロ界面や格子欠陥近傍の僅かな原子配列の変化を解析するためは,現状よりさらに一桁小さいピコメートルオーダーによる原子位置の計測が必要不可欠な技術となる.このピコメートルオーダーの実空間での材料解析において走査型透過電子顕微鏡法が一つの重要な手法となりつつある.本稿ではオリビン型リン酸鉄リチウムの表面再構成構造観察の結果および画像解析によって初めて認識できる10 pm以下の陽イオン変位を内在するチタン酸バリウム薄膜中のドメイン構造解析に関して紹介する.