2019 年 54 巻 1 号 p. 3-7
走査透過電子顕微鏡法(Scanning Transmission Electron Microscopy; STEM)で結晶構造を解析するための計測技術の概要と,原子変位を観る試みについて述べる.結晶構造を反映したSTEM像を得るためには,入射プローブを原子列間隔以下まで収束することに加え,十分なsignal-to-noise(SN)比で歪みなく画像を取得する必要があり,そのほかにも定量的に信号を計測し評価する必要がある.本稿では環状暗視野像を用いてピコメートルオーダーまで原子位置の同定を試みた結果を紹介する.動力学的回折効果や試料の傾斜が原子位置の同定にどれほど影響するのかを概観する.