顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
解説
電子エネルギー損失分光法による材料誘電特性解析の基礎と応用
佐藤 庸平寺内 正己
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 55 巻 2 号 p. 75-82

詳細
抄録

電子エネルギー損失分光法(EELS)は,固体の光学的・誘電的特性の解析に用いることができる.高速電子のエネルギー損失過程は,固体内電子とのクーロン相互作用に起因した誘電応答の結果として理解され,EELSスペクトルから固体の誘電関数の情報を得ることができる.誘電関数は固体の性質を示す基本的な関数であり,古典的なモデルを用いて理解することができる.本記事では,EELS測定により導出した誘電関数から固体の物性がどのように理解されるのか,古典的なモデル(ドルーデモデル,ローレンツモデル)を用いて解説を行う.誘電特性の解析例として,近赤外散乱材料として注目されているLaB6の測定例を示し,材料内のキャリア電子の特性について議論する.さらに異方的な結晶構造を持つCsドープタングステンブロンズの角度分解EELS測定の解析例を示し,異方的な金属材料ではどのように誘電特性が理解できるのかを述べる.

著者関連情報
© 2020 公益社団法人 日本顕微鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top