2024 年 59 巻 2 号 p. 52-56
厚い試料の内部を可視化するのに,走査型透過型電子顕微鏡法(STEM)は結像レンズ系の色収差によって解像度が制限される透過型電子顕微鏡法と比べて優れている.そのため,走査型透過型電子顕微鏡法(STEM)は電子線トモグラフィーによる三次元構造解析にしばしば用いられる.しかし,特にフレームあたりミリ秒オーダーまたはそれ以上の高速イメージングを追求する場合,STEMの画質はノイズやアーチファクトによって顕著に劣化する.本稿では深層学習に基づくデノイズが高速STEM撮像に有効であること,また高速STEMトモグラフィーに応用できることを報告する.高速STEMトモグラフィーでは,わずか5秒の連続傾斜像収録で厚さ300 nmの鉄鋼試料からでも三次元転位配置が十分な精度で求まる.液体セルを含む比較的厚い媒質中の試料のその場観察またはオペランド観察に応用できると期待される.