2023 年 89 巻 6 号 p. 171-183
人びとの食物選択および摂取の動機を探ることは,より効果的な健康介入プログラムの計画に加え,個人,地域,および文化による行動の違いのよりよい理解に役立つ.しかし,これについて発展途上国の村落地域で行われた研究はほとんどない.さらに,食物選択および摂取の動機を評価するための質問票はほとんど西洋人を対象として開発,検討されたものである.そこで本研究では,インドネシアのスンダ農村において,食物摂取の動機を評価するための質問票The Eating Motivation Survey (TEMS)を用いた調査を実施し,本対象集団におけるこの質問票の適用可能性を評価した.二つの農村コミュニティの住民155人からTEMSに対する回答を収集した.Cronbachのα係数によりサブスケールの信頼性および内的一貫性を評価した.また,探索的因子分析によりサブスケールの妥当性を検討した.本対象集団ではhabits,priceのサブスケールで高いスコアが観察され,これらがこの集団に特徴的な強い動機である可能性が示唆された.ただし,サブスケールの信頼性は概して低く,15のうち10のサブスケールでα係数が許容可能とされる閾値0.7を下回った.探索的因子分析で抽出された因子は項目の分類がTEMSとは異なっており,TEMSの15のサブスケールの構造が本研究の対象集団には適していないことが示唆された.すなわち,食物摂取の動機のサブスケールの分類構造は集団によって異なる可能性が示された.