日本健康教育学会誌
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原著
知的障害者のメタボリックシンドローム予防に関する探索的研究
荒井 弘和小嶋 宏子山崎 由美
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2011 年 19 巻 1 号 p. 15-25

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抄録
目的:本研究は,知的障害者が,1)身体活動を実施することの障壁,2)好ましい食行動を実施することの障壁,3)メタボリックシンドローム予防のための方策を探索的に検討する目的で行われた.
方法:知的障害者の親または作業所職員59名に対する自由記述式質問紙調査を行った.内容分析は,川喜田二郎によって開発されたKJ法(「紙切れづくり」および「グループ編成」)を用いて実施された.3名の作業者(保健師2名と心理学者1名)が,知的障害者が身体活動または好ましい食行動を実施することの障壁,およびメタボリックシンドローム予防のための方策を集約した.
結果:身体活動を実施することの障壁として12の下位カテゴリが,好ましい食行動を実施することの障壁としては10の下位カテゴリが,メタボリックシンドローム予防のための方策としては14の下位カテゴリが得られた.さらに,12の身体活動を実施することの障壁として「本人系(例,始められない)」「施設系(例,施設がない)」「関与者系(例,支援してくれる人がいない)」という上位カテゴリにまとめられた.また,10の好ましい食行動を実施することの障壁は,「本人系(例,食事のバランスが悪い)」と「関与者系(例,本人に食事について学ばせる機会がない)」という上位カテゴリにまとめられた.最後に,14のメタボリックシンドローム予防のための方策は,「食行動系(例,おやつを控える)」「身体活動系(例,歩く)」「食行動・身体活動以外系(例,記録を取る)」という上位カテゴリにまとめられた.
結論:知的障害者のメタボリックシンドロームを予防するためには,行動科学的な分析結果をもとに,身体活動や好ましい食行動支援のための障壁を克服していくことが重要である.
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© 2011 日本健康教育学会
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