日本健康教育学会誌
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総説
職域ヘルスプロモーションにおける健康生成論的あるいはポジティブ思考の重要性
小林 敏生
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2011 年 19 巻 1 号 p. 83-88

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抄録

本稿では,第20回IUHPE世界会議で発表された産業保健に関するセッションや演題を概観し,職域におけるヘルスプロモーション(HP)の現状と課題,および今後の方向性について考察した.
本学会の職域のHPに関するシンポジウムである「産業保健における健康生成論的アプローチ」では,職域におけるHPの視点に立った包括的モデルや考え方として,健康生成論(Salutogenesis)と首尾一貫感覚(SOC)が議論された。その結果,それらのモデルに基づいたエビデンスが職域のHPの有力な理論やモデルを提供し得る可能性があり,今後は個人ならびに組織をターゲットとした介入研究の必要性が示された.
近年,仕事に関連するポジティブで充実した心理状態で,活力,熱意,没頭によって特徴づけられる,ワーク・エンゲイジメントの概念が注目されつつあり,このポジティブ心理学的な考え方は,本学会で取り上げられた健康生成論的なHPの推進とオーバーラップするものであった.
今後,職域におけるHPの推進において,個人だけでなく組織的なレベルでの健康生成論的,あるいはポジティブな健康への取り組みとエビデンスの蓄積が重要である.また,HPへの取り組みは,産業保健の専門家だけでなく,労働者や経営者と協働した取り組みが必要であり,その際には心理学,経営学,政策科学などの多様な専門家,さらには行政,公的・民間シンクタンク,健康コンサルタントなどが連携した持続的取り組みが重要となると考えられる.

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