抄録
目的:自治体の市民向け講座において,学習内容が受講者から地域へ普及するLearning Partner Modelの有用性について検討することを目的とした.
方法:2自治体における健康に関する市民向け講座(28~30回)のうちがんに関する講座の前後に,受講生(以下,第一参加者)とその家族または友人(以下,第二参加者)を対象とした自記式質問紙調査を行った.調査項目として,社会的属性,がん予防知識,がんの講座で学んだことを共有したいと思うかをたずねた.回答の得られた第一参加者(事前事後とも58名),第二参加者(事前53名,事後54名)を解析対象とし,事前事後比較,第一・第二参加者間比較を行った.
結果:がん予防知識について,事前調査では,正答数の平均値に第一参加者と第二参加者間で差は見られないものの,事後調査では第一参加者が有意に高かった(p<0.01).事後調査において,がんの講座で学んだことを共有したい人数は,第一参加者は全員が,第二参加者は8.5割の者が,少なくとも1人以上の数字を回答していた.
結論:本実践報告では,学習内容が受講者から地域へと波及効果をもたらす可能性として,受講者の社会的ネットワークを好ましい情報伝達経路ととらえたLearning Partner Modelの有用性が示された.今後,学習内容が確実に伝達される介入プログラムを開発し,自治体の市民向け講座事業が地域の健康水準向上に寄与するためのプロセス評価を行うことが可能となる.