日本健康教育学会誌
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特別報告
集団戦略における行動経済学と健康格差の視点:PROGRESS-PlusとCANを例に
福田 吉治
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2017 年 25 巻 4 号 p. 287-293

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抄録

目的:健康教育・ヘルスプロモーションにおいては,健康格差の視点の必要性や従来からの行動科学に基づく健康づくりの限界が指摘されている.本稿では,“PROGRESS-Plus”と“CAN”のフレームワークの紹介を含め,行動経済学と健康格差の集団戦略の応用について論じた.

内容:社会経済的要因による健康格差は日本でも多くの知見が蓄積され,いわゆる健康無関心層の健康水準や行動変容を促すことの重要性が指摘されている.健康介入が格差に与える影響を評価する必要性も高まっている.そこで,システマティックレビューにおける格差(公平さ)への影響を評価するため,“PROGRESS-Plus”が提案された.格差を評価するための代表的な社会経済的指標を示したものであり,日本の今後の健康介入の評価においても有用性が高い.行動経済学の健康づくりへの応用もまた期待されている.これに加えて,ナッジやデフォルトオプション等の行動経済学の考え方を応用することで,集団戦略(ポピュレーションアプローチ)の効果を高めることが期待できる.具体的な例として,“CAN”(Convenience+Attractive+Normative)は,行動経済学の考え方を取り入れており,健康的な食の選択を促すフレームワークとして有用である.

結論:集団戦略においては,健康の社会的決定要因を考慮し,従来からの行動科学に行動経済学の理論を加えることで,健康格差を縮小するとともに集団全体の健康水準を高めることが期待される.

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© 2017 日本健康教育学会
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